漆拾陸 ひとりの時間 ページ28
炭治郎たちが、風呂場から戻った後、私も風呂へ行こうと軽く準備する
その間善逸に、俺はもう一回入っても良いよとか言われたが、奴の右頬に平手打ちをかましてやった
そんな度胸もないくせに…
風呂は、軽く銭湯と言って良いほど広くて、最近は湯呑み風呂で生活していた私にとって、それは気持ちを昂らせた
そっと湯に足先を沈めてから温度を確かめる
熱過ぎず、少し痺れを感じさせるこの温度は、私にとって丁度良い
湯に身を沈めると、傷がチクリと痛み出すが、気にしない
しばらくぼーっとして、今日あったことを思い返す
……
先程までの三人が入っていた時は、私がいる部屋まで騒音が響いていたが、今は静まり返っている
「いいなぁ…」
あんなに、煩かったら、余計なこと考えずに済むのに…
私自身、風呂は好きだが、一人で物思いにふけるこの時間が好きではない
ふと視線を下にして、私自身の身体を見つめる
いつ負った傷なのか、自分でも記憶がない数々の痣と傷の痕
誰かとお風呂に入りたいのは、一人でいる時間を減らしたいから
だけど、こんな身体は見られたくない…
深くため息をつくと、虚しさだけが残る
あの時…伊之助と入ってたら、なんて思われたかなぁ
心配してくれた？
励ましてくれた？
拒絶された…？
答えの出ない疑問を考え続ける私は、意味のないことをしていると分かってはいたものの辞められない
考えている内に目の奥がツンとしてきた
あああ、駄目だ 精神が弱すぎる
今日のご飯…なにかなぁ
私は、別のことを考えて、気を紛らわせた
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作者名：あおい亜緒 | 作成日時：2020年5月17日 18時
