伍拾壱 雷神 ページ3
伊之助は、その後少し放心状態になった後、私に調子に乗るなと言ってきた
なぜ、怒られたのかよくわからなかったが、私はそれが嬉しかった
すると、伊之助は、手に持っていた猪を被って
「猪突猛進 猪突猛進!!!」
と言いながら、私の前から去っていった
あ…行っちゃった…
____
どうやら、この屋敷には鬼はそれほど数は居ないようで、私を執拗に追いかけてくる鬼は今のところ現れていない
その間に私は、この屋敷のあらゆる部屋という部屋を探したが、生きている人は見つけられなかった
そう、血を流して亡くなっている人は何人も見ているのに
「……」
私がもう少し早く来ていれば、こういうことにはならなかったのかな
なんて、考えてもどうしようもないことなんだけれども、考えずにはいられない
この屋敷に囚われた人たちは、昨日まで”鬼”という存在を知らなかった人たちが殆どだろう
鬼の認知度は、極めて低い。というかおとぎ話の中でしか登場しない実在しないものだと思っている
私も、普通に生活していたら、鬼殺隊なんていう存在は知らなかったし、知りたくもなかった
鬼なんていう物騒な存在が、人間を喰うなんて 信じたくなかった
できることなら、普通に暮らしたかったよ私も…
私は、その部屋を跡にして、廊下に出ると、
「ア゛ーーーーーッ 来ないでェ!!」
という甲高い叫び声が聞こえた
聞き覚えしかないその声の方へ、私は急いで向かう
鬼の気配がする方へと私は走った
声が聞こえた付近の襖を間髪入れずに勢いよく開ける
向かった先には、予想通り、善逸と正一くんがいた
目の前には、床を這いつくばって動き回る舌が異様に長い鬼がいた
「Aさん!!」
私の存在に先に気がついたのは正一くんだった
善逸もあとに続いて私を呼ぶが、私はそちらには行かない
私に気がついたのは、二人だけではなく、鬼もそうだった
鬼は私を見るなり
「お前も稀血か、お前は何人分だァ?」
”も”と言っているあたり、稀血が私以外にもいたのだろう
「お前にやる血なんか、一滴もないよ」
私は、そう吐き捨てて、その場を去ろうとした
しかし、
「A、お前はもう動くな」
さっきまで震えていた筈の善逸が、私の腕を掴んで離さなかった
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作者名:あおい亜緒 | 作成日時:2020年5月17日 18時