いもうと。 【太宰治】

９．おやすみ ページ11

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えいえんを ともにしよう。





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死人のように冷たい彼の手がゆっくりと私の首に
絡みつく。



そうしてから。



「……ぁ、ぐ……やめ、っ」



じわじわと力の込められる彼の手を引き剥がそうと必死に抵抗する。が、所詮私はただの女で彼は男。力の差なんてものは火を見るよりも明らかで。


涙がまたどぷりと溢れた。



「＿＿嗚呼、かわいい。」



彼が熱に浮かされた声でそう囁く。恍惚とした表情を浮かべているのが歪む視界の中でぼんやりと見えた。

酸素を取り込もうと大きな口を開けても当然それは不可能で、意識と身体がばらばらになっていくような感覚に陥る。


やめて、助けてと訴えたいのに舌はまるで石にでもなったかのように喉奥で静かに鎮座していてそれも叶わない。



段々と手足の感覚がなくなってきて目の前がちかちか点滅する。そうしてその時初めて悟った。



今この男の前で死にかけている女は、男の【いもうと】ではないのだと。



思わず笑みが溢れた。殺されかけているこの状況で笑えるなんて私はもうとっくに可笑しいのだろう。

でも。それでも。





＿＿私は彼が、私を【私】としてその瞳に写してくれたことが堪らなく嬉しかったのだ。





ぐ、と感覚の消えた腕を無理矢理持ち上げる。嗚呼。この喜びを、愛を、彼に伝えたい。


震える手を彼の頰に滑らせた。そうして愛していると伝えれば彼は少し驚いた顔をして。それから＿＿


ああだめ。すごくねむたい。





＿＿ぷつり。





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