9.やらかしてしまったようです。 ページ11
*
「それでもうチューヤがあまりに可愛いすぎて最近悶え死にそうなんですよ店長〜」
「俺が何だって?」
「あ。」
死にました。
*
午後六時。店内にいるのは私と先程キッチンに引っ込んでしまった店長と、常連の中原さん。
昼間の賑やかさが嘘のように静まり返った店内で、私は中原さんに謝り倒していた。肝心の彼は苦笑いを浮かべて私の謝罪を流しているけれど。
事の発端は一五分前のとある出来事だ。
私は先日猫カフェ【サンドラ】から、私が名付けた猫【チューヤ】を引き取ったのだが、
あまりにも可愛すぎて店長に惚気話を垂れ流していたのだ。
だって仕方がないじゃないか!誰かにあの子の可愛さを知って欲しかったのだから!
その上閉店間近だったのもあって、私はもう兎に角店長にチューヤのことを話しまくっていた。
そうしたら。まさかの本人が来てしまって私が猫に【チューヤ】と名付けて可愛がっていることがバレたのであった。死にたい。いや誰か殺してくれ。
「ほんっとうに申し訳ありませんでした……中原さんにとても良く似ていたのでつい……」
自分の名前を猫に付け、その猫を可愛がっている女。最悪である。
深く頭を下げて謝罪をする。私のことは嫌いになってもお店は嫌いにならないでください。
そんなことを考えていたら、頭にぽすりと軽い衝撃が走り、「別に気にしちゃいねェよ」と一言。
「でも」と引き下がる。お客様に気を遣わせてしまうなんて私は店員として最低だ。久しぶりに凹む。
暗くどんよりとした陰鬱なオーラが私に纏い始めたのを悟ったのか、中原さんは「じゃあ俺のことも名前で呼んでくれ」と。
「……名前、ですか?」
「手前さえ良ければだけどな。」
そう言って頰を掻く中原さん、もとい中也さんの顔は少し赤みを帯びているような気がして。ああ照明の加減かなぁなんて、ちょっととぼけてみたり。
「中也、さん。」
あれ、なんだろう。顔が熱い。ただ常連さんの名前を呼んだだけじゃないか。いつも家で【チューヤ】と同じ風に呼んでいるのに。
心臓がばくばくと今までにないくらい強く脈打っている。全身の血液という血液が総動員して頰に集まるのを感じる。
この感覚、なんだっけ。
嬉しそうに笑う中也さんは、なんだか、こう、いつもとは違うような。そう、雰囲気。それがあって。
__待って。貴方そんなにカッコ良かったですか?
*
470人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
村人C - 神に祈りを(//∇//) (2022年6月8日 21時) (レス) @page24 id: 22d4be940f (このIDを非表示/違反報告)
M - 凄く美しい(?)なんかもう言葉に表せない程好きです。神様素敵帽子君が尊すぎです。夢主の性格も可愛らしくて吐血しそうでした。もうトゥンクが凄いです!! (2022年5月8日 15時) (レス) @page24 id: e7b90db1c1 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 否、可愛いから付き合いたいな。危険は重々承知してますが。 (2020年6月12日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 『手前』ってか…可愛いね、中也ちゃん。 (2020年6月12日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
あっぷる(プロフ) - Uヒさん» コメントありがとうございます!ご満足いただけたようで良かったです!ご愛読ありがとうございました! (2020年4月28日 10時) (レス) id: 9e41ced277 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あっぷる | 作成日時:2019年7月13日 2時