「コーヒー。あとそれから手前。」【中原中也】

１０．尋問されるようです。 ページ12

＊





【チューヤ事件】の後、また常連さんが増えました。



「コバ！今日はテンチョーのサンドウィッチが食べたいわ！」


「こらこらエリスちゃん。ちゃんと店員さんにご挨拶したの？」


「リンタロウ五月蝿い！私は今コバと話してるの！中年は入ってこないで！」


「酷いよエリスちゃ〜ん……」



……うん。なんとも賑やかな方々である。このお二人のやり取りはいつ見ても賑やかだ。いつか慣れる日は来るのだろうか。



まぁまぁと小さな女王様をなだめつつ。ご所望のサンドウィッチ、それからミルクティーにコーヒーを次々と並べていく。

相変わらず仕事が早いね、と笑って褒めてくださるおじ様、森さんはコーヒーがお気に召したようである。そして金髪の可愛らしい女の子、エリスお嬢様はサンドウィッチに夢中だ。


このお二人は初来店時からそれは良く来てくださっている。感謝しかない。


ごゆっくりどうぞ、と一礼して下がる。いや＿＿下がろうとしたのだが。エプロンがお嬢様に掴まれていた。

「？」となりつつ、お嬢様？と尋ねる。反応はない。え、これ大丈夫？

不安になって森さんに助けを求める視線を送る。彼はコーヒーを一口飲んで、それから何故か部下の色恋沙汰について話し始めた。

……は、はぁ。



「彼はとても頑張っているのだけれど、お相手は中々手強いようでね。＿＿ところで、店員さんはどの様な男性を好むのかな？」



笑いながらそう言う森さんに若干の恐ろしさを感じながらも。歳上で、優しい男性が良いです、と。ある常連さんの顔が思い浮かんだけれど、すぐに消した。

そうしたら今度は、身長についてはどうかと聞かれた。これも答えなければ帰してもらえないようだ。


身長については特にこだわりはない。何故世の中の女性たちが男性に高身長を求めるのか私には甚だ理解出来ない。


身長について素直に伝えたところで、ぱっとお嬢様の手からエプロンが解放された。そうだ、この子大丈夫なの？

心配になってお嬢様を見ると、それはそれはは幸せそうな顔でサンドウィッチを頬張っていた。


至って普通の幼女である。


先程の彼女は私が見た幻か何かだったのだろうか？私疲れてる……？森さんも何事も無かったかのようにコーヒーを飲んでいる。



……やっぱり不思議なお二人だ。



＊





「チューヤとコバが結婚したらコバは私のメイドさんにするの！」

「それは良いね。＿＿安心したよ、なんとか脈はありそうだ。」





＊

１１．またご馳走するようです。→←９．やらかしてしまったようです。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す