検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:6,273 hit

5. ページ6





「…チッ……チッ……チッ……、」


定期的に車内に響くのは秒針が刻まれる音…ではなく、人間舌打ち時計こと隣に座る男の威嚇行動である。







あの究極の選択、私はこの男の下で働くことを取った。

もちろんこの選択が間違っていないとは言わない。それでも、水商売をして破滅していった女たちを何百と見ていたから。私の母が、そうだったから。


母の姿を思い返すと、どうにもあの選択肢を選ぶ気にはなれなかった。のらりくらり生き延びていればいいなとか考えていた。


……まあ、この状態を25分前の私に教えたらそんな甘い考えもトランプタワーのように崩れるだろう。





「………あ"ーーーーー、くそ、……チッ…、」




定期的な舌打ちに挟まれる悪態に毎度ビビりながらも、これが5分置きとなれば慣れるのは容易い。

…さて、これから先どうなるのだろうか。あの神隠しにあった子のようにここで働かせてくださいと答えたのはいいものの、例の黒くて高い車に押し込まれ、隣にどっかり狂人が座って早28分。私は一生こうして押し込まれ続けるのだろうか。






「__オイ聞いてんのかブス!!」




「っへ、あ、はい、?」





考え事の最中に現実に引き戻された私は間抜けな声を出して狂人に目をやった。




そしてまあびっくり、もう少しで鼻先がくっつく距離に整った顔立ちがある。どうやら身を乗り出しているようで、圧がすごい。ところで、こんなにも美形なのになんて残念だろうか。というか近くないか??




「名前」


「え???」


「名乗れっつってんだよぶっ殺されてぇのか」


「い、今吉Aです、」


「はッ、名前までブス」




男は体制をそのままに言葉を続けた。




「俺の足引っ張った瞬間にスクラップ」


「え、なんの話で、」


「あ?言っただろーが。テメェが勝ったら俺の部下に置くって」


「あの話有効なんですか!!?」


「うっせぇ殺すぞ。有効だわボケ」


「鳴き声殺すぞだったりします??…いや、あの、……遠慮します、というかさせてください」


「テメェに選択権あるわけねぇだろ。…借金完全返済まで、きっっっちり面倒みてやるよ。


__生き延びたこと、後悔させてやる」







「気張れよ、借金女(クズ) ♡」その言葉を耳元に添えて、男は悪魔のように微笑んだ。

どうやら生き延びさせてくれた天女は、私を谷底へ戻したいらしい。




__ああ、こんな借金女(クズ)でも生きているのに。

6.→←4.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (51 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
107人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

小川優(プロフ) - 三途好き、、てか、耳かきの上のやつの名前初めて知りましたw (2022年7月15日 22時) (レス) @page8 id: 43275f8478 (このIDを非表示/違反報告)
ばぶみ(プロフ) - 月宮莉夢さん» コメントありがとうございます!これからもお楽しみいただけたら嬉しいです!! (2022年7月14日 15時) (レス) id: c38e402b4b (このIDを非表示/違反報告)
月宮莉夢 - とっても面白いです!!今後の展開が楽しみ、、!応援してます!!主様のペースで頑張ってください(*^^*) (2022年7月13日 22時) (レス) @page8 id: b5f61b261d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ばぶみ | 作成日時:2022年7月12日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。