カフェオレ男子【昼神幸郎】 (ページ10)

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１０．嫌いなものはページ10

「Aちゃん、こんにちは」

「うわ」

「最早隠さなくなったよね。まだ俺のこと嫌い？」

「きっ………………ノーコメント。」

「それはね、もうほぼ言ってるってヤツだよ。」

朝の凸が毎日のように続くようになって数週間。

既に夏服への移行期間が終わり、現在は梅雨真っ只中。

今度は昼休みの凸が増えた。

しかも、星海が購買に行っていて私一人の時を狙って来る。

まだ私はこいつもカフェオレも嫌いだけれど、あまりそれを口に出すのは控えるようにしている。

言葉は鋭利な刃物だ。もはや私はこいつに表情を取り繕うのはやめたが、言葉までさらけ出してしまえば、こいつは兎も角私が居た堪れない。

もう二度と、罪悪感で寝れないでいてくれただけで充分、とか言われたくないし私もしたくない。

「………なんで来るの。」

しかし、本当にこいつはよく分からない。

何故、嫌われているとわかっているのに来るのか。

本当は嫌な顔を向けられて嬉しいとか思うマゾ体質とかだったら、ちょっと同情の目を向けてしまうが、そうでは無いのだろう。

そんな私の問いに、奴はキョトンとした表情で応える。

「え？だって、俺を克服するんでしょ？」

「は？」

「だから、俺をいつか克服するんでしょ？なら、そのために毎日会って慣れなきゃ。カフェオレみたいに。」

……………………思い出した。

勢いのままに言ってしまった売り言葉。

まさかここで買われるなんて。

というか、私はすっかり忘れていたというのに。

それよりも前に言った言葉の罪悪感が強すぎてそこまで考慮していなかった。

「あれ、自分で言ったくせに忘れたの？」

「………………」

「俺のこと、裏で“カフェオレ野郎”って呼んでるんでしょ？なら、克服する気満々ってことじゃん。」

「！」

………盲点だった。

そのあだ名はそういう意味とも捉えてしまう。

まるでどころか豪語してる時点であだ名の意味なんて何を隠してようがもうどうでもいいけれど、盲点だった。

怒りは口を緩める。覚えておこう。

「それで？克服する気あるの？まさか、嘘だなんて言わないよね？」

「…………っ」

「克服する気ないなら、あの時のこともっと全力で謝って欲しいなぁ」

「るっさいな！！やるよ！！やりますよ！！これでいいでしょ？！」

またもや、私はカフェオレ野郎にしてやられてしまった。

その日から、暫くどころか毎日のように、朝と昼にあいつがやって来るようになった。