4話 ページ5
薬研side
その審神者は、嵐のようだった
今日新しい審神者が来ることは知っていた
先日、俺達を苦しめてきた悪鬼が連行され、その傷も癒えないうちに新しい審神者の来訪を知らされた
俺達は前夜に集まり、話し合った
勿論、この本丸に審神者は要らず、来た瞬間殺してやろうとの結論が出た
それで、誰が殺すかとの話になった時に、迷わず手を挙げた
俺にとっても人間は要らない。殺してしまいたかった
いち兄も兄弟達も、他の刀も文句は言わなかった。てか、言うはずもない。どうせ殺すのなら、誰がやろうと同じだからだ
そしてやってきた、審神者来訪の日
玄関の扉が開けられたと同時に、審神者の脳天を目掛けて自身を投げる
しかしそれは届かず、脳に届くギリギリ……いや、多少の余裕を残して阻まれた
それだけでは飽き足らず、審神者は何事も無かったかのように俺に刀を返し、易々と背中を向けた
____舐められている、と思った
あの攻撃を止められただけで分かる。この審神者は圧倒的に強い
だが、格下とはいえ刃物を持った相手に背中を向けるなんて、幾らなんでも俺達を舐めすぎだろう
………格下相手なら何してもいいってか
全く、これだから人間は
まぁ、いい。その高慢さを恥じて死んでいけ
俺はそのまま刀を構え、審神者の背中に突き立てようと大きく振りかぶった
しかし、その瞬間、審神者の足と手から物凄い量の霊力が放出された
一瞬のことで何が何だかわからなかったが、すぐにわかったのは、自分の体の変化と、今足で踏みしめている本丸の景色だった
体は手入れを終えた後のように傷一つなく、ボロボロだった服も新品の如く綺麗になっていた
そして荒れ果てた庭は整備され、池の水は透き通っているし、なんなら鯉も泳いでいた
本丸の屋根も廊下も障子も壁も、傷も汚れも無くなっている
……霊力の大量放出による浄化と修復
一般的な審神者ならまず出来ない荒業に、俺は空いた口がふさがらなかった
当の本人は、またも何事も無かったかのようにケロッとしているし、あの儚げな容姿からは想像もつかないような男勝りな口調で、こんのすけのお小言を聴き逃しながら、大股で廊下を歩いて去っていった
最初から最後まで、大暴れのこの審神者
………手入れをしてくれたとはいえ、所詮は人間で、俺たちが忌み嫌う人種だ
この程度で情が芽生えたなんてこともありえない
けれど、俺に向けた一瞬の視線は、全てにおいて無関心だった
何故かそれが、とても寂しかった
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苺みるくラテ(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2022年12月19日 22時) (レス) @page44 id: 00ab994726 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - 夜中に笑い堪えるの大変なんだぞ (2022年11月20日 22時) (レス) @page17 id: 301f09f551 (このIDを非表示/違反報告)
kaki氷 - 展開おもろ!!神が沢山…!応援歌を即興で作ろ(真顔)← (2022年11月19日 16時) (レス) @page44 id: 3cc8562ddc (このIDを非表示/違反報告)
アオバ(プロフ) - 夢主ちゃんハイスペすぎて鼻血出そうです…!!続き、楽しみにして待ってます! (2022年10月3日 23時) (レス) @page43 id: 106335cad0 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 好きです…!!!!!!!!とても面白かったです!!!!更新頑張ってください、楽しみにしてます!! (2022年9月8日 23時) (レス) @page43 id: 25d0243371 (このIDを非表示/違反報告)
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