第百三十二話 『ありがた迷惑』 ページ36
狼が去っていった方向を暫く見つめにこにことした表情で手を振っていた旭川波根は、ある程度の時間手を振るとその手を下ろし、狼が去った方向へと逆戻りする。
…あちらに人がいることはわかり切っているのに、何故人がいないかもしれないアジトへ向かう必要があるのか。
「ちょっと、ありがた迷惑だよね」
苦笑して、歩を進める。
あの悠っていう子の力、少し貰っちゃったけど…
どの位の子に使えるかなぁ。
うまくいけば数人くらい一気にお友達になるかも。
あっ、他の子の力をそっちにまわせばもっと広範囲に、もっと沢山の子達に…、それこそ本人の力を越すくらいの力が出せるかも。
まぁ、再現だから限界はあると思うけど。
ちち、と動物の鳴き声がして顔を上げると、いつか見たリスくんがこちらを見つめ、手紙をくわえている。
「…もしかしたら悠って子の手先…、でもないよね。お手紙、渡してもらえるかな」
ちょろちょろと肩に上ってきたリスを人撫でして手紙を開く。
『旭川 波根へ
この前はどうも有り難う。それなりに楽しかったぞ。最後は面倒だったがな。それはそうと、聞きたい事がある。何かお前と話すとなんか…こう、邪気のようなものを感じるがお前は呪われてるのか?』
名前で呼んでくれてもいいんだけどなぁ…
くす、と笑って続きを読む。
邪気ってなんだろう。
脳内にふと、結婚を迫ってくる姉の姿を思い出してゆるゆると首を振った。
『波根ちゃんお姉ちゃんと結婚しましょう、結婚結婚結婚…』
『波根ちゃ〜ん、ここにいるのはわかってるのよ〜。ドアを開けて波根ちゃ〜ん』
青褪めた表情で眉間にしわを寄せこめかみを押さえて、波根ははぁと溜息をついた。
少なくとも呪われてはいないと思うんだけれど。強力な味方もいたし。
…困った。かくものがない。
「あっ」
いい事を思いついた。
力試しに。
「リスくん、ちょぉっとだけ僕の目を見て」
くりくりとした大きな目が僕に向いた。
見つめ合う。
「リスくん、君は“この手紙を書いた人”のところに帰る。そうしたら、地面に…」
こう。かける?
と、地面に“会えたら答える”とかいてみせる。
「……かけるね?書けるなら返事をして。二回鳴くだけでいい」
「ちちっ」
「良い子、良い子。書かないとさっき出来たお友達のご飯になっちゃうからね。頑張ってね」
できたらいい物あげる。
そういって放すと、リスは一目散に走っていった。
さて、僕は人がいる場へ向かおうか。
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ゼロ(プロフ) - その話は一旦おいときましょ、なにかあったらあったで、きっと対応があります(多分) (2016年9月18日 10時) (レス) id: 59a32107a0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこうさぎ(プロフ) - ネット依存狼少女さん» プロフィールはあんまり荒らされないんですが、小説に載せた瞬間荒らされるんですよ……(遠い目) (2016年9月18日 10時) (レス) id: 721485c99d (このIDを非表示/違反報告)
ネット依存狼少女(プロフ) - あれ、でも私がダメとなると太宰さんや江戸川さんのキャラクターかなりアウトじゃ… (2016年9月18日 10時) (レス) id: fb9839b891 (このIDを非表示/違反報告)
ネット依存狼少女(プロフ) - うぁあ難しい…荒らしも理由を言って荒らしてくれれば良いのに…。取り敢えずゼロさんの言うように苦情を待ってみます。 (2016年9月18日 10時) (レス) id: fb9839b891 (このIDを非表示/違反報告)
ねこうさぎ(プロフ) - 『容姿のイメージは誰々さん』とかなら大丈夫ですが、性格を似せると大惨事になります。 (2016年9月18日 10時) (レス) id: 721485c99d (このIDを非表示/違反報告)
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