【オリジナル企画小説】継承者Ｒ弐 (ページ31)

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第八十一話『鯱』古明地那楠side ページ31

巨大蟷螂を窒息死させた様を見て、私は思った。

えっと確か破沼さん？が鎌を折り、千尋夜さんが閉じ込め、天野さんがとどめ、って…………

｢…………私、いらなかったみたいですね。｣

誰にともなく呟いた。万一聞かれたら向こうもリアクションに困るだろうし。

すると、引き千切られた堕落者の鎌のひとつが動きだし、こちらに飛びかかってきた。

｢だからってわざわざ私に出番くれないでくださいよ！｣

そう言いながら勾玉の剣で叩き落とす。案の定周りは｢何言ってんだこいつ｣の顔をしている。

しかしそれからほどなくして他の鎌も動き出したので皆そっちに気をとられる。

｢本体死んでも動くのかよこいつ！｣

｢凄まじい執念だねぇ……｣

｢ちょ、ちょっと俺はパス…………｣

破沼さんはさっきの能力の反動で動けなくなっているが、それでも容赦なく、しかも何故か二体の鎌が襲った。

鎌が切っ先を破沼さんに向けた瞬間に、私と天野さんの攻撃がヒットし鎌は動きを失った。

｢ふう…………にしても、さっきまであんなに固かったのに本体が死んだ途端に脆くなりましたね。｣

そう、さっきまで勾玉の剣では傷ひとつ出来ていなかった堕落者の一部とは思えないくらい、これは脆い。もう五個が黒い汁を出してぐずぐずと溶け出していた。

……………………五個？

気付いたときには、私の首筋に冷たい感触が当たった。

思わず、目を閉じた。

ﾄﾞｼｭｯ

｢めいじ、生きてる！？｣

…………？

目を開けると、目の前には見慣れた紺色の白衣。そして右下には銃弾に撃ち抜かれた鎌。

｢明音さん…………！｣

そこには、二十年前孤門家屋敷で出合い、五年前の戦いで共闘し、この戦いに呼ばれるまで同居していた義妹、孤門明音がいた。

｢め、めいじ！早く来て！一緒に！｣

｢え！？何かあったんですか！？｣

｢あちきのこの様子で察して！！｣

明音さんは、肩で息をしていたし、いつもの紺色の白衣もだいぶ乱れていた。それだけで、何か大変な事があったと分かった。

｢察しました！天野さん千尋夜さんすみません！ちょっと行ってきます！｣

そう言うと、破沼さん含め三人の答えも聞かず、明音さんに連れられ走り出した。