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第五十七話『蜘蛛』福門兎叉丸side ページ7

(……嗚呼、終わった……)
 俺は先程の発言を、今 自分の中で猛烈に後悔している真っ只中である。その所為か、顔が自棄に熱い。屹度(きっと)、自分の顔は真っ赤なのだろう。
 だが、彼等の前で「吾輩」と名乗ってしまった以上、これはそのままで接せねばいかないだろう。嗚呼、恥ずかしい。学校でも、家庭でも、素は出したことが無かったのに――
 俺の家は裕福で、代代 由緒正しき家庭だった。その所為か、親は何かと言葉遣いに煩い人で、俺は小さい頃から堅苦しい言葉ばかり教わられてきた。面倒くさかった。その全てが。でも何故か、時代劇の……古風の喋り方を聞いたとき、俺は本能的に格好良いと感じた。それからだ、俺が親に隠れてこんな喋り方に没頭したのは。
 でもまさか、これがこんな形で公(おおやけ)にバレる事に成ろうとは。まあ、多少は衣装のお陰で誤魔化せそうだが。男の方は、少しばかり苦笑を浮かべている。それ以降、会話は無い。すると、この重い沈黙を破るかの如く、衝突に部屋のテレビが作動し、ルール説明の様なものが音声と共に流された。
 それが終わると、先程のテレビで示された場所に置いてある三つの腕輪に目を向けた。男は、真っ先に其処へと向かう。俺も、興味本位で続く。腕輪に違いは見られなかったが、男は三つをじっくりと観察する様に眺めた後、解ったと云うようにして、一つの腕輪を自らに付けた。意味が解らなかった俺も、腕輪を眺めているうちに、ある事に気が付いた。三つのうち一つにだけ「king」と書かれているのだ。
(……まず、この「king」は俺のじゃあないな……)
 そんな事を考えていると、廊下を見に行っていた男が慌てて引き返してきた。その緊迫な表情から、“何か”得体の知れないモノが居たと云うことが悟れた。男は武器を探し、壁に掛けられた狙撃銃を持っては、廊下に居るであろう“何か”に放った。
 俺も、何か、何か武器に成る物は…………在った、鎌槍。部屋の隅に掛けられているのを発見し、直ぐ様 男が戦闘中の廊下へ駆け出す。廊下へ飛び出すと、其処には奇妙な容姿の犬らしき生物が居た。この際、其れはどうでもいい。兎に角、彼の援助が最優先だ。今迄黙っていた女も、状況を理解して動き出す。
 俺は気付くと、その化物に立ち向かっていた。後ろで男の声が聞こえるが、今はそれどころでない。化物の足の隙間に滑り込み、後ろへと回り込んで、武器を振り翳(かざ)した。
「喰らえ、化物!」

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ジグ(プロフ) - 終わりました (2017年3月18日 17時) (レス) id: 551194a6cd (このIDを非表示/違反報告)
ジグ(プロフ) - 更新します (2017年3月18日 16時) (レス) id: 551194a6cd (このIDを非表示/違反報告)
北斗七星(プロフ) - 終わりです (2017年3月18日 16時) (レス) id: 9ad4b46b38 (このIDを非表示/違反報告)
北斗七星(プロフ) - 更新いきます (2017年3月18日 16時) (レス) id: 9ad4b46b38 (このIDを非表示/違反報告)
鯉城@メイドラのエルマ赤穂浪士で死亡(プロフ) - 終わりましたー、次の方どうぞ! 本当だ、順位上がってますね笑 (2017年3月18日 16時) (レス) id: 38080604d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海月 x他8人 | 作者ホームページ:( ˇωˇ )  
作成日時:2017年2月3日 22時

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