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第二十六話『狼』望月蒼生 ページ26

「追いかけますか」

「ああ、そうしよう。単独行動は控えたほうがいいと思われるしな」

 それならばリーダーに従うまで。桃椛さんを追うため外に出た私達が見たのは唖然としている桃椛さんと人に似た何か――説明で言われていた堕落者だろう。ソレが木に貫かれている光景だった。
 周りに他は誰もおらず、その光景を生み出したのは呉部 桃椛、ただ一人と結論付けるしか出来ない。

「もしかしてそれが御前の力……」

「そうみたいです。ですが、足に痛みが走るようですし、なにより……」

 私には扱える勇気は持ち合わせていない、そう彼女は目を伏せて言った。だけど、当然だと思った。こんな非常識だらけの環境の上ですぐに戦えるのは同じような戦場を渡り歩いた者くらい。彼女の反応は全くおかしくない。

「大丈夫。まだ戦えなくてもいい。こんなの他の人も無理」

 ぶっきらぼうと思われるかもしらないけれど私にはこういう喋り方しか出来ない。今までそれで生きてきた。
 そして、私にもなにか出来ないかと考える。私の授けられたのはナイチンゲールの力。彼女はクリミアの天使、ランプの貴婦人と呼ばれた当時の医療を飛躍的に進めた人物。きっと殺傷は好まない力のはず。
 半ば無意識にランプを握る手に力を込めているとランプの灯りがぼうっとついた。淡く儚く見える光だが逆にそれが幻想的な雰囲気を醸し出している。しかし、私は倦怠感を感じていて立つのもしんどく感じてしまう。

「足の痛みが薄れていきます。望月様の力、のようですね」

 自分の足を見て動かしている桃椛さんは先程より明るい顔でそう言った。
 ランプの点灯、突然の脱力感、痛みの癒え、これら三つは偶然ではなく必然的なものと考えよう。すると私の力はランプをつけている間、傷を癒す事ができる。その原動力は私の何か。脱力感と倦怠感を感じることから体力や気力といった辺りと思う。私は戦えそうにないのだからそれくらいは許容範囲とする。
 思考に耽けていたら唐突にランプの火が消え、同時に倦怠感がマシになったような気分になった。とはいえ、全力疾走をした疲労感がある。

「どうやら制限があるようだな」

第二十七話『蜉蝣』闇空玲玖→←第二十五話 『狼』呉部桃椛



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I’m(プロフ) - A (2019年10月5日 15時) (レス) id: 12d36b8d85 (このIDを非表示/違反報告)
鯉城@二航戦バンザイ(アローラの姿)(プロフ) - 作者様、お話が全て埋まってしまったので続編お願いします。 (2017年2月3日 20時) (レス) id: fb07d4ff14 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸(プロフ) - 終わりました。 (2017年2月3日 18時) (レス) id: bf31fee5d1 (このIDを非表示/違反報告)
烏丸(プロフ) - 更新します。 (2017年2月3日 18時) (レス) id: bf31fee5d1 (このIDを非表示/違反報告)
鯉城@二航戦バンザイ(アローラの姿)(プロフ) - 終わりました (2017年2月3日 10時) (レス) id: e72c19c3f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海月 x他9人 | 作者ホームページ:( ˇωˇ )  
作成日時:2017年1月28日 10時

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