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くちづけ三十と四つ ページ39

織「A」

貴「織田作!?」


坂口さんの部屋からの帰り道
いきなり呼び止められたかと思ったら、織田作だった
会うのは久し振り
太宰さんからよく、話は聞いていたけれど


貴「久し振りね、織田作。どうしたの?」

織「いや、安吾に用事があってな。会いに行ったら、さっきAが出ていったばかりだと聞いた」

貴「だから追いかけてきたの?」

織「嗚呼」


暫く顔を見ていなかったからな、と言って笑う織田作
幼い私にとって唯一、友人と呼べる関係だったかもしれない
太宰さんの部下になってからは、会う回数が少なくなってしまったが


貴「元気そうね」

織「お前もな、と言いたいところだが、顔色が悪い。無理するなよ」


ぽんぽんと私の頭を叩く織田作


貴「子供扱いしないでよ」

織「俺から見たら子供だ」

貴「もぅ」


膨れて見せた頬を指で突かれて、ぷすっと空気が抜ける
何処からともなく笑いあった


織「太宰がよく、お前の話をしていた」

貴「太宰さんが?」

織「嗚呼。しょっちゅうだ」

貴「嬉しい、な。少しは気にしてくれてるのかしら」

織「告白のことか?」

貴「ええ」

織「俺は驚いたがな。昔のお前からは想像がつかない」

貴「ふふっ、確かに」


話ながら歩いていると、分かれ道に来た
右に行けば外へ
左に行けば奥へ繋がる
私は左にいくが、織田作は右らしい


貴「其れじゃあ」

織「A」


真剣な声に見上げれば、織田作の厳しい顔が見えた
瞳には心配そうな色が見える


織「死ぬなよ」


ひゅっと息を呑む
織田作は私の返事を聞かずに、右へと歩いていった
織田作の背中を茫然と見つめながら、脳内で言葉の意味を反芻する

………どう、して


混乱する
織田作は何に気づいてそう言ったのだろうか
唇が微かに震えるのを感じながら、只、確実に言える言葉がぽつりと溢れた


貴「ごめん、なさい」


ごめんなさい、織田作














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(プロフ) - わぁ、前に読ませて頂いて(泣いた)忘れられなかった作品にまた出会えました!!この作品大好きです。 (2020年3月11日 6時) (レス) id: 001cac99b9 (このIDを非表示/違反報告)
KAZUKI(プロフ) - 電車で読んじゃいけないやつだった(泣) (2018年12月16日 13時) (レス) id: ccd6d3c3c5 (このIDを非表示/違反報告)
きー - 感動しました。もうボロ泣きです。ありがとうございます! (2017年12月13日 0時) (レス) id: ea7bbfad76 (このIDを非表示/違反報告)
Asora(プロフ) - もう大号泣です。うわああああ(´;ω;`) 昔にも見たんですけど、やっぱりこの小説大好きです。他の作品も頑張って下さい。 (2017年7月28日 22時) (レス) id: 32969ac174 (このIDを非表示/違反報告)
蒼月華(プロフ) - 祀さん» 有難う御座います。こんなに感想を頂けれるなんて……!!!凄く嬉しいです。どんどん泣いてください。其れほどに入り込んで頂けれるなんてとても光栄です。有難う御座います。 (2017年5月6日 19時) (レス) id: 70f2eb3a84 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼月華 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/01g/  
作成日時:2017年1月1日 22時

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