今年もよろしくね.EX-3 ページ48
「マスター！！」
『ゾムさん、お疲れ様です』
やりきった、というかんじの笑顔を浮かべてゾムさんがやってくる。額に浮かんだ汗をハンドタオルで拭いながら。
「な、マスターにとって今年はどうやった？た、楽しかった？」
『んー、そうですね。楽しかったです、とっても』
それはよかったわ、とまた笑ってゾムさんは続ける。どこか遠くに目を向けて、寂しそうに目を伏せて。
「俺な、たまに“今”が夢なんじゃないか、って思うことがあんねん。毎日楽しい、皆で一緒に居る。嘘みたいな。ホンマに、楽しい時間なんや」
焦って口調が荒くなる、段々目に涙が浮かんでくる。それほどまでにゾムさんが不安になっているのだ。周りが聞けばとんだ杞憂だと笑うんだろう。けれど、私にもその考えが痛いほど分かった。
そうだ、たまには初心に帰ろう。私達の出会いは“悩み”からだったじゃないか。
『ゾムさん、マスターとしてひとつ、アドバイスをさせてください。』
「おん…」
『では。
仮にここが夢だとしても、ですよ。夢の中で過ごした時は無くなりません。ちゃんと頭の中に残ってます。
だから、夢から覚めた時にふと“ああさびしいなあ”と思えるような、そんな楽しい毎日を送りましょう！悪夢なんて嫌じゃないですか！
……でも、私はここにいます。確かに存在します。なので、絶対に夢じゃないと胸を張って断言できます！安心してください！』
「マスター、あんたって人は……ほんっまに、ポジティブなんやな！」
そして屈託なく笑う。私も笑い返そうとしたそのとき、時計に張り付いていた人達がカウントダウンをはじめた。もう今年ともおさらばらしい。
「じゃあ、マスター。来年もよろしゅうな」
『はい、よろしくお願いします』
3,2,1……
それと同時に、夜空へ大きな花火が打ち上げられた。それを数秒間眺め、そしてゾムさんの方へと向き直る。
目が合う。じっくり数秒見つめ合う。
なんだか目を逸らせなくて、そしておかしくなって吹き出した。
笑顔のまま、弾けた表情のまま。
あけましておめでとうございます。今年もよろしくね。
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双雲銀(プロフ) - 酸水さん» 酸水様、コメントありがとうございます。素敵なお店と言って頂けて嬉しいです……！ 見つけて頂けただけでもう私は胸いっぱいなので、お気になさらないでください…！！！ またのご来店をお待ちしております！！！ (2022年1月3日 0時) (
レス) id: 24811d2493 (このIDを非表示/違反報告)
酸水(プロフ) - ランキング載ってて、タイトルが好みだったから覗いて見たら、銀太様でしたか…… 思わず一気見してしまいました…。喫茶店めとろ、素敵なお店でした。やー、もっと早く見つけられれば良かったなあ……(複雑) (2021年12月31日 9時) (レス) id: bcfadbcbc5 (このIDを非表示/違反報告)
双雲銀(プロフ) - ヴォルフさん» 神作品と言ってくださるなんて……字書き冥利に尽きます。コメントありがとうございます。 (2021年11月29日 17時) (レス) id: c910ec8157 (このIDを非表示/違反報告)
ヴォルフ - 神作品を見つけた・・・閉まりかたが好みでした！ (2021年11月27日 19時) (レス) @page45 id: 4a6bc2e12a (このIDを非表示/違反報告)
双雲銀(プロフ) - 藤棚乃花さん» ありがとうございますー！！！好みだなんて言って頂けるなんて身に余る光栄です…。応援に応えられるように頑張ります！！！ (2021年9月12日 18時) (レス) id: c910ec8157 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：双雲銀太 | 作成日時：2021年7月10日 20時
