名前を呼び合うだけで幸せです！ ページ22
｢A｣
会場の裏口で待っていると朔間先輩がやって来た。
そういえば、先輩は私の名前をいつの間にか呼び捨てで呼ぶようになった。
前までは、嬢ちゃんって呼んだりしていたのに…。
別にそれが嫌ってわけじゃなくて、むしろ、嬉しい。……なんだか、特別扱いされているみたいだから。
｢おーい。どうかしたかのう？｣
『は、はい！いえ、特に何かあるというわけではなくてですね…！』
｢………｣
じーっと目を見つめられて、私はうっと言葉に詰まる。
無言で話せという圧力を掛けてくる上に、顔まで近づけてくるものだから、私は降参するしかなくて大人しく口を開いた。
『その、朔間先輩に名前を呼んでもらえるのが嬉しくて……』
｢っ……そ、そうか｣
朔間先輩がそう言って口元を押さえた。
ニヤケている口元を隠したかったようだけれど、全然隠しきれていなくて、私は少し笑ってしまった。そもそも、目元も和らいでいるし、笑っているのはバレバレだ。
『朔間先輩って以外と分かりやすいですよね』
｢……えっ。そんなことはじめて言われたのう…｣
ぽかんとした顔で私を見つめる朔間先輩が可愛らしくて、さっきから口元が緩みっぱなしだ。
今でも信じられない。
ずっと憧れてきた朔間先輩が私のことを好きで、付き合ったという事実が。
｢というか、Aはいつになったら名前で呼んでくれるんじゃ？｣
『えっと、いきなり名前で呼び出したら周りに何か言われませんか？一応、秘密でお付き合いしているわけですし……』
｢むっ。我輩だって、Aに名前で呼ばれたいのじゃ〜！｣
子供ですか。
というツッコミが喉まで出かかったけれど、なんとか飲み込む。
朔間先輩も無理だとわかりつつも駄目元で口にしているのだと思う。
私が押しに負けて付き合ったからといって根本的な問題……、アイドルとプロデューサーであるということに変わりはないのだ。
私達が付き合っていることが公になれば、当然批判的な意見が大半だろう。
それを分かっていて朔間先輩は、私にアタックすることを辞めなかったし、私は結局受け入れてしまったのだ。
｢なんて、冗談じゃよ。我輩もさすがにそこまで考えなしじゃな、｣
『零さん』
｢…………A｣
批判上等です。
全部わかってて付き合ったんだから。
『2人の時はそう呼び』
私の言葉はそこで途切れた。
｢っやっと、抱きしめられた…｣
強く抱きしめる零さんの腕の力が少し痛くて、でも幸せだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 173人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さぁ - りっ、凛月君も書いてるだとっっ...！み、見なきゃ今すぐ← 無理しない程度に頑張ってください！ (2021年6月3日 17時) (
レス) id: fd66046518 (このIDを非表示/違反報告)
安城(プロフ) - さぁさん» 初めまして。コメントありがとうございます…！ふとした瞬間に出てしまう素の零さんはこだわったので、そう言っていただき嬉しいです！また最後までお読みいただきありがとうございました！現在は、凛月くん夢を執筆している為、終わった後俺零さん夢書こうと思います！ (2021年5月12日 14時) (レス) id: 5852e8de80 (このIDを非表示/違反報告)
さぁ - 一気に読んでしまいました・・・！こんな凄い文才うらやましい！(何が言いたいのかわからない)時々(？)登場してくる俺様零様にずっとニヤニヤしっぱなしでした。こんどは丸々俺様零様のお話を読みたいです！楽しみにしてます！本当にお疲れ様でした！！ (2021年5月11日 23時) (レス) id: fd66046518 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：安城 | 作成日時：2020年10月28日 16時
