†脅かす闇 ページ23
久々にGOD座の稽古場に来ている。
ちなみに今日は僕一人。晴翔は家にいる筈だ。
そして
「悪いなA、遅くなった。早速始めようか」
「はい、お願いします」
なんとレニさんと二人きりだ。
今日は衣装や舞台の費用の話をするために集まったのだ。
僕の向かいで軽く足を組むレニさんを直視できなくて、半分にやけながら資料に目を通す。
この作業の度に毎回緊張してしまう。そろそろ慣れるべきだとは自分でも分かってるつもり。
でも、レニさんが美しいのが悪いですからね
一通り今回の予算を見積もったので軽く紙に書き起こしてレニさんに見せる。
「このキャストの衣装なんですが、なにかこだわりがある感じですか？」
「ん、いや。特にないな。あまり目立たない平凡な物にしたいんだ」
「でしたら、前に使用した…えっとこの衣装を再利用してみては？」
スマホから数年前の講演の写真を見せた。
この役はほぼ一瞬しか登場しない。つまり、かなり綺麗な状態だろうし、観客も恐らく気づく人はいない。
GOD座がケチケチするのはいただけないような気もするが、安いに越したことはない。結局、準備費用の何倍もの収入になるがまあ、意外と重要なのだ。
「なるほど…では、この小道具も…」
「ああ、なるほど。つまりこれが…」
僕たちの談義はしばらく続いた。
†
「___では、そうゆうことで。」
「ああ。意見はすぐに手配するよ。」
かなり話し込んでしまった。
ちら、と腕時計を見ると結構な時間になっていた。
「A、送っていこうか」
不意打ちでレニさんからのイケメンビームをくらいよろけそうになる。流石に冗談だ。
確かに、最近は暗くなるのがはやい。
…だからといって
「あはは、流石に大丈夫ですよ。レニさんこそ気を付けてくださいよ。」
「ああ…。気を付けろよ」
レニさんに迷惑をかけるのはいただけない。
†
駅から出るとかなり暗かった。
ヒュウヒュウと冷たい風が頬をなで、思わず小さく悲鳴をあげた。
足元には風に乗ってきた枯れ葉が舞っている。
少し前まで暑かったのにあっというまに冬になったな…
腕時計を見ると午後７時を指していた。
今日の夕飯当番は晴翔。
早くかえって夕飯を食べたいなぁ、なんて考えながら晴翔の待つ家まで歩きだした。
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作者名：Noahu | 作成日時：2017年9月5日 23時
