もう少し優しくなれませんか皆さん【文豪ストレイドッグス】

ツンデレ55─番外編第一話─ ページ5

夜、何故か中也君がマンションの前に立っていた。

また森さんからの用事かなと思い乍急いで駆け寄る。

「今晩和中也君」

後ろから声を掛けたが、反応が無い。

心做しか震えているようだ。

私は前に回り込んで顔を覗き込んだ。

「うおっ？！」

「あ、気付いた。今晩和」

「お、おう」

「如何したの？」

“あー…”と声を詰まらせる。

何なんだろう。用事が無いなら戻って良いかな。

「あの、さ」

「なに？」

「今日手前休みだったよな？」

「そうだけど…何か用なの？取り敢えず立ち話は私が疲れるし上あがりなよ」

中也君の顔が輝いた。

え、何、中也君なんなの。

今日に限って滅茶苦茶素直じゃない？なに？基次郎の変な薬飲んだ？

「手前の女子力皆無な部屋がまた見れるンだな！」

「今直ぐ警察呼ばれたく無かったら帰れ」

「済まん冗談だ」

飲んで無かったわ。

普通に正常だった。

正常なのか？これが尋常で良いの？え？良いの？

やだよ私。

「はい、どうぞ」

取り敢えず部屋に来て貰う。

上がってくる彼はちゃんと靴も揃えていてほんと変な所はちゃんとしてるんだよなぁって思った。

「邪魔するぜ」

「ん、其処適当に坐ってて良いよ。お酒は無いから欲しいなら自分で行ってね。珈琲は砂糖とか入れる？」

「厭、ブラックで良い」

チビが大人ぶってる。

そう思ったが実際ミルクとか砂糖を入れている所を見た事が無い為、実際ブラックが好きなのだろう。

実際は、中原が見栄をはっているだけなのだが其を知るのはマフィアの極僅かな人間だけである。

ミルクも砂糖もマフィアでは入れる事が多いのだ。

「どーぞ」

「おう。有難な」

「で、今日は何の要件で来たの？」

途端に黙る中也君。

何か今日は何時もの勢いが無いな。

「中也君？」

「………んだよ」

「ん？」

「…今日、誕生日なんだよ」

驚いた。

そんな事二年の間一度も聞いた事が無かったから。

今日だったんだ。

心の手帳にメモをとっておいた。

「御目出度う！贈呈品(プレゼント)は今度で良い？」

「気にするな。突然来て贈呈品寄越せとはさしもの俺だって云わねェよ」

「え？じゃあ何で？」

中也君が呆れた様な、悲しい様な顔をする。

何か酷い事思われてない？

「鈍過ぎだろ糞……」

モロ云われましたねはい。

「え、何なの？帰る？」

「だーっ！違ェ！俺が柚に会いたかったんだよ判れや糞が！」

「………え？」

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