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困り事8つ目 ページ9

受話器を置いて、公衆電話に入れたカードを手に持ち部屋へ戻ろうとする津守を恐る恐る呼び止める。

「な、なぁ、津守」

「はい、何ですか?」

振り向いたソイツは、いつものふにゃふにゃと緩んだ笑みを浮かべていて、先程の顔はもしかしたら錯覚だったのかしらと思う。

声は津守のものしか聞こえなかったが、10分程度は何かを話していたと思う。

津守は「母さん」と呼んでいたから話しているのは母親なのだと分かる。分かるのだが。

「今の電話、母親?」

「?そうですけど…何か?あっ、もしかして長電話し過ぎでしたか?!ごめんなさい!」

「あ、いや、そうじゃない!そうじゃないんだ!言い方が悪かった!悪い!違くて!お前がなんか、能面みてぇな顔してたから誰なんかと思って!」

きょとんとした顔をする津守。その表現が余りにも無垢で、何も分かっていなくて、それに背筋がゾッと冷えた。

一緒に居た他の教場の同級生と目を合わせる。

同級生が、幾つか聞いていいか、と声を上げる。

「津守、お前さ、何か困ってないか?」

「困ってるとは?」

「両親に首を絞められるとか、食事が与えられないとか、部屋に拘束されるとか、そんな事はないか?」

「いえ、そういった事は無い、ですね?え、何か疑われてます?」

「いや!無いならいいんだ!勘違いだった!…最後に一個いい?お前、親に事どう思ってる?」

「とっても優しくて慈悲深くて、大好きです!」

一瞬またあの能面のような顔をした後、にっこりと笑って大好きだと宣うそれが、酷く恐ろしいものに見えた。

これ以上はダメだ。踏み込んではいけないものだ。俺たちはそう判断し、即座に話を切り上げた。

「そっか!仲良くて羨ましいよ。あ、部屋戻る所だったんだろ、邪魔して悪かったな」

「いえいえ!ご心配頂いてありがとうございます!ではおやすみなさい!」

「ああ、おやすみ」

手を振り返し、歩いていく津守が角を曲がった所で友人と共に大きく溜息を吐き、傍にあるソファに座り込む。

「…アイツ、いつも笑ってるよな。なのに能面みたいな顔してた」

「ああ。いつも通りに声だけは明るいのゾッとしたよな」

「分かる。しかもあんな顔して話しといてさ、何も知りませんって顔で両親のこと大好きだ、つってんだぜ。怖ぇよ」

「これさ、踏み込んだら負けだよな」

「…だよなぁ」

いつもの5人がまた何かやらかしたと騒ぎの広がる夜、俺たちは一つ秘密を共有した。




後悔は先に立たない事を知りながら。

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(プロフ) - ついに親友公開と爆処組に真実を、!!高木ほんと優しい…萩と松田も…更新楽しみにしてます!! (2022年6月6日 5時) (レス) @page45 id: 8afc6fd8a6 (このIDを非表示/違反報告)
- とても面白いです。更新頑張ってください❗ (2022年5月6日 18時) (レス) @page33 id: b70e4d72d6 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - またの更新楽しみにしています! (2022年5月2日 19時) (レス) @page33 id: 75972ecbb8 (このIDを非表示/違反報告)
れぃと(プロフ) - おっ…!?ついに、ついにか……!? (2021年7月5日 22時) (レス) id: 40283c6b11 (このIDを非表示/違反報告)
深夜 - 夢主くんは幸せにして欲しい… (2021年7月4日 23時) (レス) id: b4c500a793 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんこ | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年5月13日 12時

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