二十六話 ページ26
その日の放課後。
「よう、柚」
校門前にやたらと人が居るなと思えばお兄さんで、仕事はどうしたのかと思う。
蘭ちゃん達は無情にも「ごゆっくり〜♪」と三人で先に帰ってしまった。取り残された私は、注目を浴びながらお兄さんと帰る。
「あの…仕事は…」
「早退」
「何故私を迎えに…?」
「お前が親御さんとちゃんと話す為の作戦会議するから」
サングラスを掛けずんずんと歩く姿はカタギとは言い難く、まして彼が警察官だとは夢にも思わないだろう。
安心して下さい、サングラスを外したお兄さんは頗る可愛いですよ。
「お前あれから母親と話してねぇんだって?」
「え…そう、ですけど、なんで…」
「俺が連絡先交換してるのがお前だけだと思ってんのか」
スーツのポケットから取り出した端末のメール欄には、父の名前。
あ、そっか。遅くなるからって連絡しないとお兄さんも来ないもんな。
「ま、そういうこった。親父さんも心配してっから今日明日の内には和解すんぞ」
「……はい!」
きちんと話したいと思っていたから、迷わず答える。
良い返事だ、とお兄さんに頭を撫でられながら真っ直ぐ帰るかと思えば、来たのはポアロ。同級生や先輩後輩が店の前や中に居た。
中から零さんが予約の札を立てられたテーブル席を指し、そこにお兄さんがずかずかと行って座る。視線がとても痛い。
正面の椅子に座ると、零さんがお冷を持って来て、殴り書き(字は綺麗)のメモを周りから見えない様渡してくれた。
「後で萩原たちも来る……って、まさか全員で考えるんですか?!」
「そうだが?」
「あー死んだ死にましたこの間から女子の視線が痛いのに私は明日から物理的に痛い目を見るかも知れないですね」
この先の学校生活を思って軽く項垂れていたら、お兄さんに「大丈夫かー?」と言われた。大丈夫じゃないです見て分かるでしょう。
既にチクチク刺さる視線がきっと数十分後には睨みに変わるんだ。泣きたくなった。
「んじゃまぁ先に言いたい事纏めろよ」
トントンとテーブルを叩くお兄さんにはっとしてノートと筆箱を取り出す。
「あ、そろそろ景光が来るから来たら方言で話してやれな。シフト終わったら降…安室も合流するってよ」
「……分かりました」
お兄さんたちが心配してくれているのが分かる。
このお隣さんとは形容出来ない関係は、どう言えば良いのだろう。
母に理解して貰いたい事を纏めながら、ふと思った。
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トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!方言聞いて癒されてる降谷さんと諸伏さんとても面白かったですww警察学校組の過保護な感じめっっっちゃ好きです!!!!!!!素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年2月18日 20時) (レス) @page38 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
さしみ(プロフ) - あんこさんのお話私好きです!またいろいろ読みに来させて頂きます♪ (2021年1月8日 11時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、警察学校組好きなのでたくさん登場していて、うれしいです。(*≧∀≦*)夢主ちゃんの方言もかわいいです!(*´ω`*)続き楽しみに待ってます(*≧∀≦*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 桜さん» 初恋の人話題にはまたいつか出るので楽しみにしてて下さいー!笑 (2018年8月25日 11時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 誰なんだ??初恋の人って? 続き頑張って下さい! (2018年8月24日 19時) (レス) id: ae3d71bb82 (このIDを非表示/違反報告)
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