二十一話 ページ21
暫し、家の中に静寂が訪れた。
初めて母に反論した。初めて母に逆らった。
ああどうしよう、なんて思っていたら、母が無言で立ち上がってお兄さんと研二さんを一睨みしてリビングから出て行った。
怒らせてしまったと申し訳なく思うが、父に「俺から言っておくから気にするな」と言われ、お兄さんたちに謝りながらも見送った。
「何か…余計な事しちゃってたらごめんね」
「いえ、このまま行けば多分公務員になる未来しか無かったので…この後はどうなっても、流れに任せます」
微笑めば、お兄さんが私の頭を撫でて言った。
「もし親の説得が出来たらすぐ俺の家に来い。荷物移動なら彼奴等駆り出せっから」
「……お隣さんってだけなのに、本当に良いんですか?」
「馬鹿、お前は妹みてぇな存在だっつったろ。兄貴に甘えて良いんだよ」
「こんな事なら俺も柚ちゃんの隣の部屋に住めば良かったなぁ」
軽口を叩いてお兄さんに横腹を殴られる研二さん。
思わず噴き出せば、二人とも安心した様に笑った。
「ま、なるようになるよ。安心して?」
「……はい」
研二さんの笑みに私もつられる様に頬が緩む。
お兄さんと研二さんはどうして私にこんなに良くしてくれるんだろう、なんて問が頭に浮かんだけど”妹の様だから“で片付けられてしまうんだろう。
でもそれもやっぱり悪い気はしなくて、お兄さんが隣の部屋で良かったな、と思う。
昔から一緒に居て、色んな事を相談できる存在。
私は、存外自分で思っているより遥かにお兄さんたちを心のどこかで頼っているのかも知れない。
七年前も、四年前も、二年前も、一年前も。彼等は私に助けられたと言うけれど、逆なんだ。私が助けられたのに。
七年前は車に轢かれて亡くなったという爆弾犯の顔を亡くなる前に偶然見てしまい、色々あって巻き込まれ、研二さんに救助されている間に上で爆発が起きた。
四年前は同等の理由でマスクと変声期で顔を隠した犯人に脅され病院で爆弾を持たされた。研二さんにメールしたら何故かお兄さんも助かったらしい。
二年前は方言が原因で学校でいじめられていて、あの廃屋に一人で肝試しに行けと言われて行ったら景光さんたちが飛び込んできて、ライと呼ばれた人に殺されかけたけど零さんに助けられた。
一年前は日直で早くに家を出た時、偶然会って立ち話していた時航さんが落とした手帳を拾おうとした時に車が来て、すんでの所で助けられた。
まぁ彼等は私の恩人で、私は彼等の恩人という訳だ。
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トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!方言聞いて癒されてる降谷さんと諸伏さんとても面白かったですww警察学校組の過保護な感じめっっっちゃ好きです!!!!!!!素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年2月18日 20時) (レス) @page38 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
さしみ(プロフ) - あんこさんのお話私好きです!またいろいろ読みに来させて頂きます♪ (2021年1月8日 11時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、警察学校組好きなのでたくさん登場していて、うれしいです。(*≧∀≦*)夢主ちゃんの方言もかわいいです!(*´ω`*)続き楽しみに待ってます(*≧∀≦*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 桜さん» 初恋の人話題にはまたいつか出るので楽しみにしてて下さいー!笑 (2018年8月25日 11時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 誰なんだ??初恋の人って? 続き頑張って下さい! (2018年8月24日 19時) (レス) id: ae3d71bb82 (このIDを非表示/違反報告)
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