十七話 ページ17
次の日、沈んだ気分のまま家を出た。
珍しく一緒に朝食を摂った父に「無理して来なくても良いんだぞ」と言われ、うんと笑ったものの、母が許してくれるだろうかと思う。
「はぁ…」
「随分とデカい溜息だな」
「どわぁっ？！？！？！」
背後から声を掛けられ飛び上がる。
顔に熱が集まるのを感じながらバッと後ろを向けば耐え切れ無いかのようにくつくつと笑うお兄さんが居た。
「び、びりすぎ、だろ…ふはっ」
「背後から来んといて貰えます？！」
驚きでドキドキと跳ねる心臓を抑える様に鞄を胸に抱き締める。
黒のスーツに荷物を持ったお兄さんは刑事なのにやっぱりヤクザみたいだ。
「そりゃ知ってる奴が居たら驚かせたくもなるだろうよ」
「だからって…」
「それより、今の溜息は悩み事か？初恋でもしたか？」
隣に並んで答えろよと言わんばかりに聞かれる。
「初恋なんてもうとっくの昔に終わってます！もっと別の事で悩んでるんですよ」
「は？」
重く低い声が頭の上から耳に届いた。
少し驚いてお兄さんの顔を見れば、酷く怖い顔をして端末を物凄い早さで操作していた。
「……今日お前の事学校まで迎えに行くわ。五時半には行くから絶対帰んじゃねぇぞ」
「え、え？」
「返事！」
「はい！」
反射的に返事をして、満足そうに歩き出すお兄さんにしまったと思う。約束してしまった…。
家で引っ越すかバイトしながらこの町で暮らすかゆっくり考えたかったのに。
「なぁ、柚」
「何ですか？」
「助言とか上手く出来るか分からねぇけどさ、俺らは歳上なんだしもうちょい頼ってみろ」
サングラスを外して振り返り笑うお兄さん。
……童顔だな、なんて場違いな感想を持つ位に心の余裕があるんだから頼る程じゃない。そう思って「ありがとうございます」と言うだけに留めておいた。
気持ちは有難いけど、これを最終的に決めるのは母なんだから。
「じゃ、授業サボんじゃねぇぞ」
「お兄さんも…頑張って下さいね」
「おう」
とある歩道橋の前で別れる。私は真っ直ぐだけどお兄さんはこの歩道橋を渡らないと警視庁には行けないから。
彼に向かって一揖してまた学校に向かう。
自分のクラスに荷物を置いてB組に入ればいつもの三人が居て、私も一緒に楽しく話した。
いつの間にか一日が終わっていた。
お兄さんを待っている間校門で佇立瞑目してしまう程、一日を通して空虚だった様に思う。
何事も無く平和に終わったこの日。でも何故か虚しかった。
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トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!方言聞いて癒されてる降谷さんと諸伏さんとても面白かったですww警察学校組の過保護な感じめっっっちゃ好きです!!!!!!!素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年2月18日 20時) (
レス) @page38 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
さしみ(プロフ) - あんこさんのお話私好きです！またいろいろ読みに来させて頂きます♪ (2021年1月8日 11時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、警察学校組好きなのでたくさん登場していて、うれしいです。(*≧∀≦*)夢主ちゃんの方言もかわいいです！(*´ω｀*)続き楽しみに待ってます(*≧∀≦*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 桜さん» 初恋の人話題にはまたいつか出るので楽しみにしてて下さいー！笑 (2018年8月25日 11時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 誰なんだ？？初恋の人って？ 続き頑張って下さい！ (2018年8月24日 19時) (レス) id: ae3d71bb82 (このIDを非表示/違反報告)
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