十六話 ページ16
結局あの二人はかなりの時間滞在し、満足したのか帰った。アイスは有難く頂いた。
それにしても私は彼等の事を甘やかし過ぎなのでは…?
あれ程敬語で返してやると意気込んでいた零さんへのlineも『疲れた僕に方言はお預けか…』としゅんとした顔文字付けられただけで方言に戻してるし……。私がチョロいだけ…?
「…そんなまさかね」
はは、と笑いながらも端末に届いたメッセージを見て一つ溜息を吐いた。
転勤族な父親とそれを愛する母親だもんな…。
『東北に転勤になった。詳しくは帰ったら話すから夕飯を作って待っていてくれ』
なかなか北に攻めるなぁ……。四国から関東に来て次は東北?この微妙な時期に転校か…嫌だなぁ…。
米花町には結構長く居たからちょっと寂しい…かも知れない。
隣の部屋にお兄さんが居て、遊びに行くと皆さんが居て、高校に行けば友だちが居て、それは皆大事な人たちで。
「……ご飯作るか」
もし転校が必要になったら皆にどう説明しよう。
そんな事をぼんやり考えながら料理をしていれば包丁で指を切った。
「ったぁ…絆創膏…」
軽く血を洗い流してティッシュで抑えながら絆創膏を探して片手でぎこちなく貼る。
やっぱりちょっと動揺してるなぁ、なんて苦笑が浮かぶ。
なんとか無事にご飯を作ってそろそろ完成、という頃に親が帰って来た。
三人でご飯を食べながら父の話を聞くと、やはり私も来るかと聞かれた。
「もう高校生とは言え、まだ子供だ。一人で出来るだろうが…」
「…二人は絶対行くの?」
「まぁ…そうだな」
「あのさ、私残りたいんだけど駄目かな?そりゃ家賃とか光熱費とか色々負担あるけど、勿論私もバイトだってする!自分のスマホ代くらいは払える様になるから!」
困惑した様な顔をする母に申し訳なくなってやっぱり何でもないと笑い掛ける。
この犯罪都市に一人暮らしは、そりゃあ心配だろうな。私も娘がこの町で一人暮らしするって言ったら止めるかも。
止まっていた箸を動かしながら「この豚汁自信作なんだけどどう?」なんて言って笑った。
…お兄さんたちと離れたくないな。
白米を口に運ぶ。なんだかもう食べる気になれなくて、なんとか白米だけは食べきって他の椀や皿をラップで包んで冷蔵庫に入れる。
「ごめん、先風呂入るね」
逃げる様にお風呂に行って、出た後も自分の部屋からは出なかった。
遅くまでリビングで話し合う声が聞こえたけど、聞かないフリをしてそのまま寝た。
引越し、したくないな。
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トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!方言聞いて癒されてる降谷さんと諸伏さんとても面白かったですww警察学校組の過保護な感じめっっっちゃ好きです!!!!!!!素晴らしい作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年2月18日 20時) (レス) @page38 id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
さしみ(プロフ) - あんこさんのお話私好きです!またいろいろ読みに来させて頂きます♪ (2021年1月8日 11時) (レス) id: 52bb9638d4 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして、警察学校組好きなのでたくさん登場していて、うれしいです。(*≧∀≦*)夢主ちゃんの方言もかわいいです!(*´ω`*)続き楽しみに待ってます(*≧∀≦*) (2018年9月30日 23時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 桜さん» 初恋の人話題にはまたいつか出るので楽しみにしてて下さいー!笑 (2018年8月25日 11時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - 誰なんだ??初恋の人って? 続き頑張って下さい! (2018年8月24日 19時) (レス) id: ae3d71bb82 (このIDを非表示/違反報告)
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