十三話 ページ13
口に微笑みを浮かべて、カツンと靴音を鳴らし新入生の群から一歩前に進み出る。
これまで僕は一度も社交界に出ていない。僕を知る者は余り居ないだろう。だからだろうか、皆から一歩踏み出した僕を見て校長や教頭、セブルス先輩、レギュラス・ブラックを知る教師らが驚いたように目を瞠り息を止めた。その他スリザリンの席でも同じように驚いた顔をしている生徒が居るのが見えたし、兄が顔を覆っているのが見えた。教師らの反応は兄には予想外だったらしい。
だが当人である僕からすれば教師らの心情も察するに余りある。何せ今の僕は嘗て入学したてのレギュラス・ブラックと瓜二つなのだ。
珍しく戸惑っている様子の教頭に帽子を被せられ、やけに静かな組み分けが始まった。
「おや、君はブラックではないのかね？嘗て私を被った少年とそっくりだ」
「僕はバートンですよ、組み分け帽子さん」
「これは失礼。ふぅむ、しかし悩ましい。君は実に難しい。グリフィンドールなら君はその勇気を持って多くの人を救うだろう、自身の身を顧みず。君はとても勇敢で危険な事を成し遂げようとしている。そしてスリザリンでは真の友を得る代わりに望まぬ道へ進む事となるだろう。かの家族を愛した少年のように。レイブンクロー、ここにも適性はある。しかしどれに入ったとて君はかの少年のように命を落とす事となほう。君の往く道はどの寮でも暗く冷たいものとなる」
適性のあるどの寮に進んだとしても危険が伴うと心配するような言い様に少し驚く。前回は悩む事なくスリザリン一択だったのだけれど。まぁ、あれこれ言われた所で決意は固まっている。帽子に強く願ってみた。
「本当に良いのかね？命を擲つ事になるとしても？」
「勿論。やり遂げると決めたので」
「では君の意志を尊重しよう。運命に幸福あれ！グリフィンドール！」
わぁっと歓声が上がる。グリフィンドールからだ。同様に動揺の声が背後とスリザリンの席から聞こえた。容姿、魔力、家柄を鑑みてもスリザリンに組み分けられるだろうと思っていたのだろう。嘗て私の兄がグリフィンドールに組み分けられた時の様に。
ここに来るのに随分と時間が掛かってしまった。椅子を下りて、ゆっくりと一歩を踏み出す。彼もこの寮に組み分けられた時、この様に一歩一歩踏み出しながら家族と訣別する覚悟を決めたのだろうか。
眩しくて遠いと思っていたあの机に自分の意志で向かいながら、これから為す事に対しての覚悟を決めた。
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巫咫刄(プロフ) - うわー続きが気になるやつやん。これからが面白くなるやつやん｡お早い更新お待ちしております！ (2023年1月15日 15時) (
レス) @page13 id: f01b4a7cd8 (このIDを非表示/違反報告)
漆黒の薔薇(プロフ) - 最っ高！！続きを楽しみに待ってます！！！ (2022年2月3日 13時) (レス) @page11 id: 462d698004 (このIDを非表示/違反報告)
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