アイドルの生活事情【沖田総悟】

Act.07*お隣さん ページ7

思わず叫んでしまったあと、ドン、と鈍い音が聞こえる。これが元祖壁ドンか……！なんて感動するも、隣の人にうるさいと思われたのは事実なので謝罪を入れようと部屋を出た。


――わたし、隣の人知らない


何個か部屋はあったけど隣から壁ドンをされるということは、隣に誰かがいるということ。
あの三人の誰なんだろう、と考えながら隣の扉をノックする。

ゆっくりと開いた扉の先には怠そうに立つ沖田さんがいた。


「さっきのやつじゃねェか」

「うるさくしてすみませんでした」


軽く頭を下げて謝る。沖田さんはなんの反応も示さずに、何かを考えていた。
調べていた時に見た写真とは大違いで表情を動かさないのが、少し怖い。何を考えているのかわからない。


「――……名前、」


よく聞こえなかった言葉を聞き返す。


「名前、なんだっけ」

「……林Aですけど、さっき自己紹介しましたけど」

「聞いてねーよ」

「知らねーよ」


思わず口が悪くなってしまい、慌てて口を抑えるが失礼な態度を取る沖田さんに別にいいのでは、と思う。
これが山崎さんや土方さんなら謝っていたところだけど。


「で？」

「いやだからうるさくしてごめんなさい」

「え、何も聞こえなかったけど」

「でも壁ドンしてきたじゃん」

「してねーぜ」


さっき聞こえた鈍い音は幻聴だろうか。
首をかしげていると、ほとんど表情の変えなかった沖田さんの顔がどこか青くなっている気がする。


「……もしかして幽霊じゃねェのか」

「んなわけない」


ありえない言葉を口にする沖田さんを否定すると、青くなっていた顔が元に戻り、大きな舌打ちをされた。


「そこはチビるぐらい怯えるとこだろ」

「揶揄うのやめてくれない？」


どうやら沖田さんはわたしを怖がらせたかったらしい。幽霊なんて信じていないわたしにとっては無意味だったが。ゆきちゃんならすごく怯えそうだけど。


「ゆきならビビりやがるぜィ」


考えていたことは同じらしい。相変わらずゆきちゃんと彼らの関係はよくわからないが、付き合いは長いのだろう。
人懐っこそうに見えて人見知りをするゆきちゃんの怯えるポイントまで知っているとは。これは明日本人に聞いて見なければならないな。


「つまんねーやつ」

「悪かったな」


パタンと閉じた扉に立ち尽くして、ぼそりと呟いた。

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