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さて、ついに天敵と向き合う日がやってきた。
｢血液検査……！｣
｢大丈夫か？｣
｢だいじょばない｣
｢……｣
夕香が眠るいつもと変わらない病室で、Aが頭を抱える。可愛い可愛い妹よ、姉に力を分けておくれ。
痛みと血が大の苦手な彼女にとって、血液検査はまさしく地獄である。レントゲン撮影等他にもやることは勿論あるが、一番の鬼門はやはり血液検査だ。しかし、これも仲間たちとサッカーをするため。
｢修也殿、いざ参る｣
｢ご武運を、A殿｣
拳をぶつけ合い、大河ドラマの如く芝居掛かった口上を述べた。大丈夫、今の自分は
◇
暫く経つと、検査を終えたらしいAがよろよろと危なっかしい歩みで夕香の病室に戻ってきた。
｢おわった……やっと自由だ……｣
｢お疲れ｣
｢血が見えた時は死ぬかと思った……｣
｢よく頑張ったな｣
疲れ切ってげっそりしている彼女は、遊び疲れて小屋に戻る仔犬のように豪炎寺の腕の中に収まる。
サッカープレーヤーには怪我が付き物。故に血を見るのは割と日常茶飯事のはずなのだが、彼女は痛みを連想する血に慣れないようだった。仲間の怪我は、痛みの連想よりも心配が先立つため平気なのだろう。Aという人間は、構成成分の半分以上が大切な存在への揺るがぬ愛だ。
｢検査結果はいつ出るんだ？｣
｢明後日には出るって｣
｢明後日か。治ってるといいな｣
Aは自然治癒力は他者よりもある。体調が悪くなりやすいのは難点だが、その分治るのも早い。朝に熱が出ても、冷えピタを貼っておけば夕方にはもうピンピンしているのが彼女だ(寧ろ冷えピタの冷気で普段以上の低体温になる)。肺の傷だって、きっと治っているはず。
｢もし治ってたら、一番最初にしたいことがあるの｣
｢ん？｣
Aとっておきの'したいこと'に、豪炎寺は思わず笑みを零して頷いた。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年9月24日 12時
