【inzm】雷門の天使様２ (ページ10)

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｢はい、いよいよ今日この日を迎えました。雷門中対尾刈斗中の練習試合。あの帝国学園を下した、我が雷門中イレブンの勇姿を見ようと、多くの観客が詰めかけております！雷門中イレブンは、どのような試合を見せてくれるのでしょうか｣

　雷門中VS尾刈斗中の練習試合。実況は雷門中VS帝国学園のときと同じく将棋部の角馬圭太である。
　Aは彼のはきはきとした口上を聞きながら、空を見上げた。……曇っている。否、曇っていること自体はさして問題ではないが、何となく周囲に不気味な雰囲気が漂っている気がするのだ。考えすぎかと思考を振り払い、フィールドに立つ雷門の選手たちを一人ずつ順番に見遣った。緊張気味の選手もいるが、殆どは静かにアップをしつつ試合開始の時を待っている。
　Aは最後に豪炎寺を見て、しっくり来る10番(エースナンバー)に小さく笑みを零した。視線に気づいたのか彼がこちらを見る。反射的にひらひら手を振ると、そっと微笑まれた。

｢A先輩と豪炎寺先輩、すっごく仲良しですよね！｣
｢幼なじみだからね〜｣

　興味深そうに話しかけてくる春奈に、簡潔に返す。豪炎寺は割と他人に心を開くのには時間がかかる。幼なじみでなければ、ここまで彼の懐に入り込めることはなかっただろう。
　ベンチでお喋りをしていると、夏未が優雅に歩いてやって来る。円堂が彼女に駆け寄った。

｢よっ！本当にこの試合に勝ったら、学校でフットボールフロンティアの参加料、払ってくれるんだよな｣
｢ええ、約束通りに。ですが……負けたら廃部ということもお忘れなく｣

　観戦に来たのかと思ってベンチを空けたが、どうやら違うらしい。夏未はあっさりUターンして戻って行く。

｢負けるもんか、絶対！｣
｢わたしもみんなとサッカーしたいから、守り抜いてね｣
｢おう！いつかAとフィールドに立つの、俺の夢なんだ！｣
｢夢は大袈裟すぎない？｣
｢大袈裟じゃないさ！ Aのシュートからは、サッカーが大好きで堪らないのが伝わってくる。お前みたいな奴と一緒に試合できたら、絶対楽しいじゃないか！｣
｢円堂……｣

　円堂は、自分のシュートを受ける度にそんなことを思っていたのか。Aのサッカーへの想いは、彼にしっかり伝わっていたのだ。思わず頬が緩む。

｢わたしも、円堂と一緒に試合するのが楽しみ｣
｢へへ、今日は応援頼むぜ！｣

　勿論だと頷き、フィールドに向かう彼を見送った。

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