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帰り道。紳士的に車道側を歩く風丸が話を切り出した。
｢それにしても……｣
｢なあに？｣
｢無茶するよな、お前も円堂も｣
｢そうかなぁ｣
そうでしかない。ドクターストップを無視して必殺シュートをぶちかまし平然としているAと、タイヤを真正面から受け止める無茶苦茶な特訓をしている円堂。これを無茶と言わずしてなんと言う。
｢なあ、病気の後遺症って酷いのか？｣
｢そうでもないよ、ちょっと肺が傷ついてるから回復に時間がかかるだけ｣
｢は！？ それ運動したらまずいんじゃ｣
｢だから息切れしない程度でしか動いてないの〜｣
｢あ……｣
そうだ。彼女は先程の特訓の後、ただ一人息を切らしてもいなかった。器用に動く頻度や質を調整していたのだろう。
知れば知るほど驚くことしかしない女の子である。
｢すごいを飛び越えてやばいな、お前｣
｢今のは褒め言葉？｣
｢無茶なことしてるから半分減点だ｣
なにそれ、とけらけら笑うAを眺めながら歩いていると、前方から足音がした。
｢あっ修也！ 迎えに来てくれたの？｣
｢A、遅いぞ｣
｢ごめんごめん〜特訓に熱が入っちゃって｣
目の前に現れた顰め面をした少年に彼女が嬉しそうに駆け寄る。随分と親しげだ。彼が、先程話していた幼なじみだろうか。
｢風丸、ここまでで大丈夫。ありがとう｣
｢ああ……うん。幼なじみか?｣
｢そうそう！ 修也、風丸が送ってくれたんだよー｣
Aの言葉に、幼なじみの視線がこちらに移った。物静かに見えるが、いかにも強者のような……圧倒的なオーラを持った少年だった。
｢そうか……ありがとう、Aが世話になった｣
｢お、おう……｣
｢修也、自己紹介！｣
｢……豪炎寺修也だ｣
｢豪炎寺か、俺は風丸一郎太。よろしくな｣
近すぎる距離感で身内のようなことを言う。幼なじみというよりはまるで夫婦だ。
｢もう暗い、気をつけて帰れよ｣
｢お前らもな｣
二人並んで歩いていくのを見てから、踵を返した。｢おなかすいた｣｢家まで我慢しろ｣という会話が耳に入る。
豪炎寺は中々冷めた雰囲気だが、中身はそうでも無さそうだと風丸は分析した。冷血漢なら幼なじみをわざわざ迎えに来たりはしないし、自分の帰り道を心配するような言葉もかけないだろう。彼がAのそばにいつもいるなら安心だと、母親のようなことを思う。
それにしても……
｢あいつら、まるで一緒に住んでるみたいな口ぶりだった気が……｣
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
