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｢ただいまフクさん！｣
｢ただいま、フクさん。今日もありがとう｣
｢Aさん、修也さん。おかえりなさいませ｣
にこにことご機嫌なAと、少し思い詰めた様子の豪炎寺。元からほぼ正反対な性格の二人だが、ここまで対称的なのも珍しい。何かあったのだろうか。
｢修也さん｣
｢…なんでもないよ｣
ぼうっとしていた豪炎寺だが、食事を始めると美味しそうにハンバーグを頬張るAを見て、微かな笑みを浮かべる。
｢俺のも食べるか｣
｢修也、ちゃんと食べないと大きくなれないよー｣
｢誰目線なんだ｣
｢親目線？｣
｢いつ親になった、お前は｣
｢細かいことは気にしない！ 修也が大きくなれるようにこのブロッコリーをあげよう｣
｢押し付けようとするな。好き嫌いせず食べろ｣
｢修也やっぱりお母さんみたい｣
｢お前を産んだ覚えはない｣
テンポの良い会話を聴いていると、Aの存在が豪炎寺の精神を保っているのかもしれないと思うことがある。
豪炎寺が笑顔を見せるようになったのは、ここに引っ越してきてから……つまり、Aと共に過ごし始めてからだ。
昔からずっと、豪炎寺とAは二人揃ったときの安定感が凄まじい。中学生にしては違和感を覚えるほど大人びていることがあるAは豪炎寺の目の前では年相応になり、悩みやすく落ち込みやすい豪炎寺はAのそばでは安心して笑っている。パズルのピースが完璧に嵌るように、この二人の関係は心地好いものだ。
ごちそうさま、と二人揃って豪炎寺の部屋に引っ込んでいくのを見ると、たまらなく暖かな気持ちになった。
どうかこれからも、この二人が揃って元気でいられますように。
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作者名：おひめ | 作成日時：2022年7月14日 17時
