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7話 ページ8

夕方から、私は、お弁当を持って秀明ゼミナールに出かけた。
始まるのは、5時15分。
終わるのは、8時55分。
間に20分の夕食時間がある。

「立花、彩。」
秀明の玄関を入ったとたんに名前を呼ばれて、私は立ち止まり、フロアを見まわした。

「こっちだ。」
階段の途中に、算数の担当の江川先生が立っている。

「ちょっと来い。」
そう言ってクルッと背中を向け、ドンドンのぼって行ってしまう。

私は、あわてて後に続いた。
なんだろう。

そう思ったとたんに!はっと思いあたった。
そういえば今日は、先週のアタックテストの結果発表日だ。
私は背すじがゾクッとした。
きっと、悪かったんだ!
どうしよう!!

「入れ」
受験Aクラスに落とされるかもしれない。
私、国語と社会は、わりと得意。
でも理科が少しニガテなの。
そしていちばんニガテなのは、算数。
きっと、あれが恐ろしく悪かったんだ……。

「すわって。」
そう言いながら先生は、近くにあったいすを取り上げて、私のすわった机の前に置いた。

「先週のテストの結果なんだけど。」
私は、体中がギュッと縮むような気がした。
来た!

「おまえ、算数がすごく悪かったぞ。
いちばん下のクラスの平均点もいかなかった。」

私は目をつぶりたくなってしまった。

先生は、
「下のクラスにおとすぞ。」
なんて絶対に言わずに、

「別のクラスに行ったほうが、
おまえのためだぞ。」
って言う。
そして私たちは、その方が自分のためだなんて少しも思わずに、落とされたって思うんだ。

「だけど、国語の成績は、すごくいい。
これだけは、三谷Cクラスのトップレベルだ。
社会も、悪くない。
三谷Aの平均ぐらいはいってる。」
落とすときには、ほかの教科のことを少しオーバーにほめたりするのかもしれない。
私はそう思った。

ああ、私は今日から受験Aだ。
そしてみんなに、Bから落ちてきた子だってウワサされる……。

「それで、ほかの教科の先生とも相談したんだが。」

私はうつむいて両手をにぎりしめた。
もしかして、受験Aよりもっと悪い進学クラスに落とされるかもしれない。
急にそう思えてきて、めまいがしてしまった。
ああ、ママになんて言おう。

「おまえを、特別クラスに入れることにする。」

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ももんが(プロフ) - 更新ありがとうございます!この作品は私の生き甲斐になっています!これからも更新頑張ってください! (2020年5月24日 16時) (レス) id: 5f1c65421c (このIDを非表示/違反報告)
- おはようございます!! とても面白いです! そして、楽しいです!自分のペースで、更新頑張ってください! 楽しみにしています!  作者様も、体調に気を付けて、無理なさらないでくださいね! 応援しています! (2020年5月24日 9時) (レス) id: fbeba8bbe8 (このIDを非表示/違反報告)
シロップ - 凄く好みの作品でびっくりしました!これからも更新頑張って下さい!! (2020年5月23日 11時) (レス) id: f315a783e1 (このIDを非表示/違反報告)
マロマロ(プロフ) - この作品すごく好きです!更新頑張ってください! (2019年11月17日 19時) (レス) id: 1787986370 (このIDを非表示/違反報告)
ももんが(プロフ) - 更新ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って下さい!待ってます! (2019年8月19日 12時) (レス) id: 5f1c65421c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:NONAME | 作成日時:2019年6月22日 23時

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