クローンになる前、八 ページ15
「片割れを造ってみないか。」
突然かけられたガラガラの声。
振り向くと、ヒゲを生やした中年のオッサンが双子の後ろにいた。
慎「はあ?」
「聞けばアンタ……病気なんだってな。」
慎「だからなんだ。」
「生きたいだろう?」
慎「………まぁ……そりゃ、死ぬより…」
「協力してほしいんだ。もちろん、そちらの嬢ちゃんにも。」
『…?』
*
怪しいオッサンに連れられやってきたのは、廃屋みたいな所だった。
少し埃っぽい。
『ねェ、あまりこういうところにいたくないんだけど…』
Aは咳込む慎之介の背中をさすりながらオッサンに文句を付ける。
オッサンは気にも留めず、何やらガサゴソしていた。
慎「何なんだあいつ……ゲホッ」
『やっぱり着いてきたの…ダメだったんじゃない?』
慎「だが…」
── 寝床はあげるよ。その身体じゃ野宿はしんどいだろ?
その言葉に釣られて来たのは、Aも同じだ。
今欲しいのは慎之介が安静にしてられる所。だがここはどうだ。埃っぽくでがらくただらけ。
しばらくするとオッサンが紙を持って戻ってきた。
「これを造ってみたいんだ。」
慎「………オイ…これって……」
『片割れって……このこと…?』
今で言う、クローン製造。
この時代は一部の人からは「片割れ」と呼ばれていたクローン。
しかし、クローンを造ることは、
『大犯罪だけど…』
「協力してほしいのはそのことだ。」
つまりこうだ。
オッサンは、前からクローン製造に興味を持っていた。だが自分をモデルにしたら、造ったのが自分だとバレてしまう。
だから、慎之介の片割れを造る代わりに捕まってほしいそうだ。
慎「は?」
『何それ…馬鹿にしてるの?』
「ちげーよ。ちゃんと話を聞け。」
オッサンはさっきの双子の会話を聞いていた。
「死にたくない」という言葉と、「慎之介になりたい」という言葉。それがピーンときたらしい。
「俺がアンタの片割れを造って、アンタが見たいっつってた世界を見せてやるんだよ。俺は片割れを造りたい。アンタは生きて、世界を見たい。利害の一致って奴だろう?」
確かに、利害は一致していた。
捕まって、何十年と牢獄に入れられてしまったら、クローンの研究ができない。そのためには、「自分が造った」と言ってくれる人が必要だった。
慎「それが…俺だと?」
『じゃあ…私は?』
オッサンはにやりと笑った。
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雨宿り侍 - ★九尾★さん» こちらにも来てくださりありがとうございます!嫌だなんてとんでもない!リクエストなどがくることはすっごく嬉しいです!番外編、書かせていただきます!! (2018年3月1日 20時) (レス) id: 4f270715fd (このIDを非表示/違反報告)
★九尾★(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品は面白かったです それでお願いなんですけどこの日常みたく番外編を書いてくれませんか?嫌だったらいいです とても良い作品だったのでまた続きがみたいなとおこがましいお願いすいません (2018年3月1日 19時) (レス) id: 0ceb133c1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨宿り侍 x他1人 | 作成日時:2018年2月24日 14時