紳士な女 (ページ9)

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人斬りと栄職【剣心視点】ページ9

「邪魔が入ったか、もう一度言おう〝抜刀したらどうだ〟？」

「お前は本当に警官でござるか…」

「ああ、帯剣を許可された合法的に人を斬れる剣客警官さ！」

『…剣心、ここは私が請け負う。お前は薫さんの所へ行け』

拙者と警官隊の者のやり取りでキレかかっている翡翠に視線を移すと小さく頷いて薫殿の元へ向かう。

「ちっ…一人は逃げたか、まあいい。抜刀しないのか？」

その剣客警官隊の態度に罵声を飛ばす街の人々、官吏抗拒罪適用などと言い出し果てには斬れという言葉に耳を疑った。

『俺の知人や街の人々に切っ先を向けないでもらおうか、相手なら俺一人で充分だ。地べたに這いつくばりたい奴からかかって来な』

完璧に堪忍袋の尾が切れている翡翠に苦笑いしつつ薫殿の前に立ち警戒しつつその戦闘を見守ることに。

「やっと抜刀したな、これで当義殺(正当防衛)が成り立つ。剣客たる者カンを鈍らせぬ様偶には人を斬っておかんとな!!!」

力の差が分からぬとは馬鹿な男でござるな。
急所を外して斬り伏せていく翡翠、実力は昔と変わらぬなと観察していると傍に馬車が停り中に居る人物と目が合う。

『さて、最後はあんた一人。もう二度と横暴なまねをしないと街の皆に誓うならそれで終わり、傷害罪でもなんでも好きにしたらいい』

「ふざけるな！そんなみっともない真似できるかぁ！！！！」

「薩摩の最強剣二の太刀要らずの示現流！」

「馬鹿な男だ、確かに示現流は類いなき剛剣」

「だが、飛天御剣流の前では全くの無意味でござる」

翡翠は斬り掛かる男の刀をヒラリとかわし、地を蹴り宙を舞い背後に立つと逆刃刀で背中を斬り付け気絶させていた。

「翡翠さん！」

『薫さん、剣心が居たから大丈夫だと思うけど…怪我してないかな？』

翡翠の元に心配そうに駆け寄る薫殿と拙者、いつの間に人払いしていたのか野次馬が遠ざかりあの人が拙者達に歩み寄ってくる。

「緋村！A！やっと会えたな。十年間探したぞ…」

「…ヒゲを生やしたんですね、山県さん」

「向こうに馬車を待たせてある、多くの維新志士がお前達の帰参を待ち望んでいるんだ。さぁ！」

『生憎、私も剣心も人斬りで栄職につく気は毛頭ないんですよ』

「何を言う人を殺・したと言ってもそれは維新の大業の立派な一部！それをお前達はまだ気に病んでいるのか!!確かにお前達を人斬りと蔑む連中もいるだが──」

その先を言おうとした彼に翡翠は剣気を向けていた。