紳士な女 (ページ33)

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観柳という男ページ33

気づけば日は暮れて空は茜色に染まった頃、やっと四人は道場へと到着する。帰りを出迎える薫だったが、見知らぬ美女に驚き最後まで言葉を紡ぐことができず目を大きく見開いて指までさしている。

「随分としなびた家ね、剣術道場？」

「ああ、こっちの人は髙荷恵殿」

道場を見渡す恵に驚きを隠せない様子の薫に彼女の事を紹介すると引き継ぐ形で翡翠が口を開くもどこか申し訳なさそうに眉を下げて首を傾げている。

『少々訳ありのようで問題が解決するまでここに置いて欲しいんだが、ダメか？』

｢そういう事なら別にいいけど、翡翠兄や剣心に手を出さないでよね！｣

『ありがとう、薫さん』

｢ここに置くのはいいけど、あなたちょっと二人に近すぎよ！離れて！｣

｢あら、嫌よ。私ねえコノ人達のこと気に入っちゃったの、それこそ片時(かたとき)も離れたくないくらいね｣

そう言って剣心の腕に自身の腕を絡めている恵はクスリと笑う、それに薫が怒らないはずもなく四人とも門から締め出されてしまう結果となった。

『少しからかい過ぎですよ、高荷さん』

｢ったく、俺たちゃ何もしてねぇのによォ…｣

｢とほほでござる…｣

｢あら、片時も離れたくないのは本当よ、剣はめっぽう強いのに人がいいんだもの。
あなた達のそばに居れば観柳の私兵に襲われても必ず守ってくれそう、緋村剣心にA翡翠…だっけあなた達護衛にうってつけよ｣

どこか悲しそうな笑みを浮かべる恵に人知れず胸を痛める翡翠はため息をつくとそれを横目に見ていた剣心もまたため息をつき事情を話して欲しいと恵を見つめる。
それを聞き左之助は苦虫を噛み潰したような顔つきで恵に詰め寄り阿片をどうやって手に入れたのかと現物を手にしているも彼女はといえば｢女に過去を聞くなんて野暮｣と素知らぬ顔をするのだから目くじらを立てているのを剣心と翡翠で宥めている。

『人間誰しも語りたくない事の一つや二つはある』

｢阿片(こいつ)がこれ以上出回るのは絶対勘弁ならねえ。必ずブッ潰してやる!!｣

｢恵殿自身の事を語りたくないというなら話さずとも構わないでござるが、せめて観柳(かんりゅう)とやらの事を詳しく聞かせて欲しいでござるよ｣

『大方その男が阿片(あへん)売買の元締めだろうけど…』

翡翠達がそんな話をしていると左之助の知り合いが彼を探していたのか慌てた様子で駆け寄ってくる。