紳士な女 (ページ4)

今日:12 hit、昨日:1 hit、合計:7,735 hit

狂いだした歯車【夢主視点】ページ4

数えきれない程に幾度も同じことを繰り返して来た俺と緋村だったがある日、一件の仕事を機に規則的に回っていた歯車が狂い始める。

『雑魚は俺が相手する、そっち任せたぞ！』

「わかった」

最小限の言葉を交わすと互いの持ち場へと駆け出す。
その日の標的は幕府方の京都所司代・重倉十兵衛だ。

『はっ！』

確実に雑魚を倒していくうちに気が緩んでいた俺の背後に忍び寄る数人の敵達、素早く避けようとするも右肩を斬られふらりと身体が傾くもすぐに持ち直す。

「翡翠！｣

肩から血を流しながらも猛者が居ないためか敵を斬り伏せていくも血を流しすぎたせいで視界が歪む、俺はひとつ舌打ちをすると相手の攻撃を避け続けているうちに意識が朦朧(もうろう)として膝を着いてしまった。

『っ…血、流し過ぎたか…』

ここまでかと半ば諦めかけた時俺の目の前に緋色の髪を靡かせ乍敵の斬撃を受け止める緋村の姿を意識が朦朧とする中見え、僅かに口元を緩めると意識を手放した。その後目覚ましたのは一刻程経った頃に目を覚まし辺りを見渡すと離れた所に珍しく頬に傷をつけた緋村の姿を捉える。頬に傷、これから先の未来に起こる悲劇に眉根を寄せる。

「起きたのか、傷は？」

『問題ない』

「そうか…」

『…それより、頬…傷出来てる(1つ目の傷…今後俺はどう動こうか…)』

〝俺〟が女である事は目の前にいる男以外に知る者は居ないため左右に頭を振る、頬の傷を見ようと手を添えると不意打ちだった為か眉根を寄せる緋村だがそんな事知るかと応急処置を施すと『それで？何があった？』と問うと何故わかったのかと言いたげな顔で見上げている。

『弟弟子の様子が違う事くらいはわかるさ』

「…」

何も言わない緋村の隣に移動て座ると修行時代にもやっていた様に頭を抱き寄せて髪を撫でてやるとぽつぽつと小さな声で呟くよう話し始める。

「ﾀﾋにたくないと、ﾀﾋねないと…言っていた…」

俺達のしている事は正しいのかと疑問を持ち始めているのだろう、何も言わず相槌を打ちつつ髪を梳くように撫でてただ話を聞き全て言い終えたのだとわかると小さく息を吐き『大丈夫だ』と告げると微笑みかける。

『人の人生を奪ってきた俺達が出来る事は維新を果たして自分なりに罪を償うこと、それだけだよ』

そう俺が言うとどこかスッキリした様子で頷くもその日俺の傍から離れることは無く寄り添い合いながら眠りについた。

それから年月は過ぎていき、維新は達成され路は別れた。