紳士な女 (ページ29)

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志士名【夢主視点】ページ29

限りなく抜刀斎に近い状態の剣心…お願いだからそんな事言わないで、人を斬らないで！強い想いが心の内から沸き起こる、今なら、この気持ちがあれば解けるかもしれない。そう考えていると剣心から凄まじい殺気を感じ、刃衛もまたそれに気づいて剣心と距離をとっている。

「命がおしくなったのなら翡翠にかけた心の一方を解け」

「俺にはもう解けん、同じ心の一方でも谷のブタ共にかけたヤツとは程度が違う。自力で解くか術者を殺して剣気を完全に途絶えさすか方法は二つに一つ」

笑みを浮かべながら楽しそうに語る刃衛に対し剣心もまた人斬りの頃のような台詞を吐き、刃衛が自身に暗示をかけたのだ。

「心の一方〝影技〟〝憑鬼の術〟これを使うのは新撰組を抜ける時以来…約十五年ぶりだな」

そういい岩を斬り付ける刃衛、その後卑怯な技だが使わせてもらうと言った後剣心が逆刃刀を鞘へと収め抜刀術の構えをとった。

「俺が殺-すと言った以上お前のﾀﾋは絶対だ」

刃衛も飛天御剣流の抜刀術の速さが最速であることは知っていたはず、直に、この闘いが終わる。

「来い、【抜刀斎】の志士名の由来篤と味わわせてやる」

「いざ勝負！！緋村抜刀斎！！」

刃衛は一撃だけだと思っている、それがこの男の運の尽き…だ。
剣心は神速の抜刀術で斬りかかる、それを見て勝ったと踏んだ刃衛が斬り込んできたところを鞘の抜刀術で肘の関節をくだきその場に刃衛が倒れ込んだ。

「飛天御剣流抜刀術【双龍閃】抜刀術が本来己にとっても一撃必殺である事も逆刃刀が抜刀術に向かないのも百も承知、抜刀術の全てを知り極めた男、それが【抜刀斎】の志士名の由来。肘の関節を砕いて筋を断った、お前の剣の命は終わった、そしてこれが─」

その先を言おうとする剣心を止めなくてはと全ての気を集中させ名前を叫ぶ。

『剣心！！』

私の声が届いたのか二人の視線がこちらに集中する、
肺機能が停止していた為後は息も絶え絶えで祠から落ちる浮遊感を感じるも衝撃はなく、感じたのは剣心の腕の温もり。

「翡翠！大丈夫でござるか！？」

『大丈夫だよ、貴方は不殺の流浪人なのよ』

不殺の誓いを破らせずに済んだと安堵しているも剣心の背後に脇差を手にした刃衛。

「流石、人斬り藍龍。時間はかかったようだが心の一方破られて…俺も随分腑抜けてたようだな」

勘違いしている剣心は刀を手に取るもその後刃衛は後始末だと自身の脇差で心の臓を貫き地に伏し暫くして命を引き取った。