紳士な女 (ページ28)

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人斬りふたり【剣心視点】ページ28

Aが刃衛に攫われた、拙者の前で。
姉のように大切な家族であり、相棒であり、拙者の唯一無二の大切な人。
書状を読み破り捨てその場を静かに後にする。

「楽しいひとときの始まりだ。なあ、抜刀斎」

『剣心！』

俺の目を見て察しが着いているのは流石と言える、しかしそう簡単にはこの怒りは収まらない、すまない…そんな目をさせたかった訳じゃないのに。

「うふ、いい目だ怒っているな」

「翡翠を巻き込んだ貴様とそれを阻止できなかった俺自身にな」

『…剣心…』

「上等上等言葉遣いが幕末の頃に戻っている、あとはそのけったいな刀の刃を返せばそれで伝説の人斬り様の復活だ」

哀しみに揺れる深緑色、直ぐに倒して戻るから…そう心で誓い逆刃刀を抜き刃衛と対峙するとどちらからともなく地を蹴り攻撃を仕掛ける。
刀と刀がぶつかり合う音、凄まじい剣気。間合いを開け動きながら相手の出方を見るべく見ていると心の一方が。

「小ざかしい！心の一方は通用しないと言ったろう！」

先を読め、やつは一度戦った相手読めないはずがない。そう思い奴の動きと剣閃(けんせん)を見切り唐竹割りのここで崩す！そのまま攻撃しようとするも刃衛は刀を反対の手に持ち替え平刺突を肩に喰らい血に倒れ血を流す。

「俺の動きを読んでいた様だが〝背車刀〟までは読めなんだか。まだだな、まだお前は幕末の抜刀斎には遠く及ばない。今のお前なら煙草三本吸う間に片がつく」

『剣心！しっかり！！』

つまらなそうな物言いの刃衛の言葉を掻き消すように聞こえてきたのはAの声、どこか焦っているように聞こえるそれは俺に気力を与えてくれた。

「つまらんな、もっと怒ってもらおうか」

『あ…！？か…は…ｯ…け…しん…ｯ』

「翡翠！」

突然苦しそうな声色に変わるAに祠の方へ視線をやる、すると刃衛から聞こえた言葉は俺を人斬りへ戻すのに確実な力となった。

「心の一方を強めにかけた、肺機能が麻痺する程度にな。流石の藍龍も肺機能が停止したら解けないさ。もってぜせいぜい二分か三分といった所だろう、強めにかけたから昨晩のように簡単には解けん」

その後刃衛の発する言葉を聞く気はない、時間もないのだから。逆刃刀を手に取ると今まで以上の速さで刃衛の顔面に斬りこみ着地するもそれを喜ぶ刃衛。

「おしゃべりの時間はないんだ、殺・してやるからさっさとかかってこい！」

その時の俺はきっと幕末の頃よりも冷たい目をしていたのだろう。