紳士な女 (ページ27)

今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:7,736 hit

姉として【夢主視点】ページ27

あれから三人で家路につきながら今回の黒傘被害について左之助が口にして少なかった事を褒めるのを聞き剣心は素直に喜べないと言えば勢だくだと返す左之助さん。彼の楽天家な物言いに自分と刃衛との違いを述べてこの差の大きさ、そして幕末の知る限りの刃衛について話し剣心は河原へ行き私と左之助さんは道場へ帰った。

「…ったくだらしねェ顔しちゃってまあ年頃の娘がヨダレ垂らして寝るなよなあ」

「なんか昨夜一睡も出来なかったみてーだぜ」

それを聞いた左之助さんは成程と言いつつが軽く薫の頬を叩いて起そうとするが起きず、仕方ないと彼女の耳元で反応するであろう事を言う。

『薫さん、剣心からの伝言あるんだけど』

「え！？あ、お帰りなさい！」

「おう、ただいま」

「そ、それで剣心は？」

予想的中し、薫さんは目を覚まして目の前にいる私達を出迎えるが直ぐに剣心がいないことに気づきキョロキョロと辺りを見渡している。

『薫さん、落ち着いて聞いて。剣心は今日は帰らない、黒傘を倒し損ねたから一人で倒すために集中したいんだ。絶対にここに戻って来る事は相棒であり同じ流浪人の私が保証する、何か渡して欲しかったり言伝があれば私が伝えに行こう。
その代わり、私からの頼みを聞いて貰えないか？』

「剣心の事についてはわかったわ。でも…翡翠兄からの、頼みってなに？」

『剣心が帰ってきた時に笑顔で出迎えてやって、君の笑顔を見たらきっと安心すると思うから』

黒傘に攫われ怖い思いをさせたくなくてそう言って納得させ、薫さんから預かったリボンと私からの差し入れの握り飯を持って河原へと向かう。

「姉さん…今は一人にして欲しいでござるよ」

『預かり物と言伝と差し入れ渡したらすぐに帰る、安心なさい剣心』

「預かり物と言伝とは？」

『薫さんから【私の一番のお気に入りの藍色のリボン、お守りがわりに貸すから刃衛との闘いが終わったら帰って来て返してね！】だそうだよ』

「薫殿…承知した、と伝えてくれるか？」

『ああ、承った。とりあえずそれ食べて力つけときなさい』

剣心への用事が終わり、向かいに立つと剣心が無事に帰ってこれるようにとまじないの意味も込めて額に口付けを落として微笑むと剣心もはにかんだ笑みを向けてくれる。二人して油断していた、その隙を刃衛につかれ私が攫(さら)われる形になってしまったのだ。
そして、剣心を煽り怒らせ抜刀斎に戻そうとしてる。居場所を書いた書状を残して。