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「私も嬉しいよ」
本音半分、嘘半分。聞けたのは嬉しいけれど聞きたかったわけではないから。
話しながら歩き始めて5分、駅についてそろそろ改札が見えてくる。
「ゴン、そろそろ改札入るから切るね」
「あ、、うん…」
わかりやすく落ち込む彼にどうせ20分後くらいには会えるよ、と伝えれば
「分かってる…」
途端に拗ねた声に変わる。
「じゃああとでね」
「う、うん！気をつけて」
通話が切れたあとスマホをカバンにしまい改札に入る。ホームに着いたらちょうどよく来た電車に乗って空いていたから空いてる席に座った。
東言、日本最高峰の大学に通いながら数々のメディア出演も行っている彼との出会いは彼の先輩兼、大学時代の私の同期である渡辺航平がもたらした。かくいう私もOGであるのだが。
大学卒業後、渡辺がOBとしてサークルへと顔出しに大学へ行くというので着いて行ったあの日。高校生クイズで有終の美を浴びたうちの1人、東言はそこにいた。
新社会人となり仕事に忙殺されていた私にリフレッシュにと久々に渡辺から連絡が来た。
「A、、Aさん」
談笑してる輪から外れた場所で1人でいるところに話しかけてきた変人は東言その人で、今現在動画で見るはつらつで茶目っ気のある笑顔ではなく、その目に浮かんでいたのは狂気的なまでの恋慕。初めましての印象は欲に塗れたクソガキでしかない。
「ヒガシくんだっけ、なにかよう」
「Aさん好き、大好きです」
「...はぁ」
食い気味にされた告白に不思議と嫌悪はなくて、だけどなんだコイツという感情は大きく占めていた。
「ヒガシくん、私たち初めましてだよね」
「はい」
「さっきの言葉の意味が私にはよくわからなかったんだけど」
「好きですって意味のことですか？」
「そう」
「そのまんまの意味です。一目惚れしてしまいました」
そういうの信じなさそうなタイプなのにな、というか下の名前で呼んだよね私のこと。
「ヒガシくんはさ、」
「
「…ゴン、くんはさ、なんで私のこと好きなの」
「うーん、、わかんないです。でも一度しただけで辞められなくなることってあるじゃないですか、、目が離せなくなったんです。Aさんから」
「えーっと、、それは好きってのと違うんじゃないかな」
「で、でも俺！、、こんな気持ちはじめてで…」
彼もまた混乱している、初めて湧き上がった自分の感情に。
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作者名：あまさく | 作成日時：2023年11月8日 20時
