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「…は」
電話口から伝えられた言葉の意味を咀嚼するのに俺は今まで以上に頭を使った。
「え、な、あのもっかい、言って」
「…連絡するの、やめようと思う」
「な…なんで」
最後に会ったのはあの夏の日だったけど、それからも何回か通話はしてメッセージのやりとりもたくさんしていたのに。
なんで、なんで急にそんなこと。
「ごめん…」
「ごめんじゃなくて、なんで、そんなこと言うのって」
「…時間がほしいの」
「なにそれ、どういう意味」
ネガティブなことばかり頭に浮かんできた。
つまりこれは、俺と別れるための口実を考える時間がほしいのかとか、そもそも俺のことをもう好きじゃなくなってしまっているのかとか。
「…週末帰るから」
「え、なんで」
「なんでじゃない！もし、もし俺が、Aに寂しい想いさせててそれきっかけなら、そんな悲しいことしてほしくない」
「っだから、航平のせいじゃな」
「ネックレス、俺つけてくれてるの1回も見たことない」
「っ…」
彼女が息を呑んだのがわかった。
弾丸で遊びに行った時もそうだったが彼女が友人と遊びに行ったときに更新されるSNSで俺はその存在を1回も確認することができなかった。
「…重かった？」
「ちがう、ちがうの」
声色から伝わる必死さは嘘じゃなそうだけど、こっちが泣きそうになってきた。理由はわからないけど。
「とにかく、絶対予定空けといてね」
「…うん」
有無を言わさずに返事をさせて、これ以上何か話してもお互い悲しい気持ちになるだけの気がしたから通話を切った。
直接言わなきゃ、俺はAじゃないとダメだって。
ただでさえ物理的な距離が離れてるのに、心の距離までも彼女から遠ざかっている気がして。
ここで会わなきゃ一生後悔することになりそうな気さえしてきて。
俺を見送ってくれたあの駅で、彼女をもう一度抱きしめよう。
そう意気込んで迎えた金曜日の朝。
「…嘘だろ」
俺は流行病で高熱を出し地元どころか学校にすら行けない状態になった。
「…もしもし」
「ごめん…行けなくなった。熱が38度あって…」
「え！？だ、大丈夫なの？」
「一応は…薬ももらってきたし、でも起きれない」
情け無い、俺はまた彼女にいらない心配をかけてしまっている。
「私はいいから、ちゃんとゆっくり休んでね？」
「…あいたい、、Aに逢いたいよ…」
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作者名：あまさく | 作成日時：2023年11月8日 20時
