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「こ、航平…」
「ごめん、勝手にきちゃった」
あの電話から大体1ヶ月後、俺はアポ無しで彼女の住むアパートにきている。
玄関先で、信じられないという顔をしているAにやっぱり言っとくべきだったかなと後悔した。
「ん、いいよ。あがるんだよね、ちょっと待って」
そう言って一旦扉を閉められた。
とりあえず帰れと言われなくて良かった…いや、そんなこと言わないか普通。
「はぁ…」
なんだろう、すごく緊張してる。ここに辿り着くまではAびっくりするかなとか、早く会いたいな、とかばっかりだったけど。
漏れ出た息はため息じゃない。ただ、向こうがあんまり俺に会えて嬉しそうみたいな、そんなリアクションじゃなかったからとかじゃない、ちがう。
「ごめんお待たせ、どうぞ」
「ん…お邪魔します」
再び扉が空いてAが出てきた。
大学生らしく特段広いわけではない部屋はなんとなく俺の知ってる彼女の部屋、といのがぴったりだった。
「くるなら言ってよ〜、部屋汚いじゃん」
「そんなことないよ」
「なんか飲む？オレンジジュースあるよ」
「あ、俺もお土産ある！」
なんか俺の知ってる彼女のリアクションに戻ったみたいで安心。
そこからは俺の持ってきたお菓子とかでお茶して、適当にビデオを見たりして過ごした。
高校の頃はデートといえばどこかに出かけるのが当たり前みたいなところがあったからいわゆるお家デートみたいなのは新鮮ですごく楽しい。
「あははっ」
「え、やばっ」
好きな配信者の動画を見て笑い合う。隣で笑うAは俺の知ってるままの彼女で、やっぱり好きだなぁとかあの時別れなくて良かったなって思った。
「…あのさ、今更なんだけど」
「うん、なに？」
「…今日…泊まるの…？」
時刻は午後4時、帰りの電車を考えるにはまだ少し早い時間な気がするけど意外と気にしいな彼女らしい提案。
「…Aさえ良かったら」
「うん…いいよ、、」
正直勝率は半々かなと思ってたし断られてもごねないで帰ろうと思ってはいた。
でも改めて快諾がもらえたらなんだかすごくたまらない気持ちになって思わず抱きしめてしまった。
「わっ、ちょっと〜」
「A〜、好き〜」
「ふふっ、私も好きよ航平」
背中に回された手にまた嬉しくなる。
こうやって彼女を抱きしめるのは久しぶりですごく安心した。
俺の知ってるAだ。
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作者名：あまさく | 作成日時：2023年11月8日 20時
