お前の隣に。/そらる/byあかり ページ2
『もしもし、A?』
「そらる、久しぶり!」
スマホから聞こえてきた彼の声に、私は胸がドクンと波打つのを感じた。普段より1オクターブほど高くなった声で、彼の名を呼ぶ。
『どうしたんだ?いきなり電話なんかかけて』
「そらると話したかったからに決まってるじゃん!そもそも、彼氏さんに電話かけるのに、理由なんている?」
少しおどけた口調で返してみる。いきなりの沈黙でそらるが照れているのが分かって、自然と笑みが浮かんだ。
そう。そらるは、私の彼氏さん。でも、彼は私の家から遠く離れたところに住んでいる。だから、今は遠距離恋愛状態。遠くて会うこともなかなか出来ないから、電話くらいしか会話する方法がないんだ。
前回話したときから、だいぶ時間が経っていたこともあり、私達は久しぶりに話に花を咲かせた。
だけど。
私は気づいていた。そらるの話し方が、いつもと違うことに。なんだかぎこちなくて、私の言葉に対する反応も遅い。少し緊張しているような空気が彼の声から伝わってくる。
「……ねえ、今日のそらる、ちょっとおかしくない?」
「……はっ?ど、どこがだよ」
思い切って言ってみる。そらるは、完全に動揺していた。
「なんか言いづらいことあるんでしょ。言いなよ、知りたい」
詰め寄ると、彼は歯切れ悪く、ゆっくりと切り出した。
「あの、さ…………もう、遠距離とかやめない?俺、そういうの無理」
「………………っえ」
身体の内側を、嫌な風が吹き抜けていくような感覚。スマホを持つ手が小刻みに震えた。
「どういう、こと」
「だから、俺はこういうの無理なの。遠距離とか、不便だし、何よr「わかった」……え?」
スマホを握りしめた。身体の震えも、流れ落ちる透明なものも無視して、出来るだけ明るい声音を作る。
「そ、だよね。遠距離は、キツいよね。心も身体も、お互い離れちゃうもんね」
『は?A、何言って……』
「い、1回切るね。バイバイ、そらる」
早口でそれだけ告げて、私は一方的に電話を切った。
机に突っ伏する。身体の震えも、声の震えも、涙も止まらなくなって、鼓動も激しい。
そらるのあの言い方、きっと私と別れたいってことだ。私の何が駄目だったんだろう。私はそらるが好き。ずっとずっと、その気持ちは変わらなかった。私はそらるに嫌われることを何かしただろうか。わからない。わからない。
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qrto(プロフ) - かのこゆりさん» スランプ中で全然執筆出来てなくて…すみません、少しずつ更新再開させて頂きますね! (2020年2月15日 0時) (レス) id: cc62ea45a1 (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり(プロフ) - リルさん、qrtoさん、お元気ですか?最近更新が止まっていて、なんだかこのまま自然消滅するのって寂しいな、と思ったので執筆しました!初のバレンタインデーネタです。タイトルの通り、あまあまにしてみました。よろしくお願いします! (2020年2月15日 0時) (レス) id: f92d830bd9 (このIDを非表示/違反報告)
リル(プロフ) - かのこゆりさん» 更新ありがとうございます!そんなに気張らなくて大丈夫ですよ!とっても可愛いお話でした!私はqrtoさんの次くらいにまた更新しますね! (2019年5月26日 6時) (レス) id: 2e93d67cbd (このIDを非表示/違反報告)
qrto(プロフ) - かのこゆりさん» 更新ありがとうございます! 私も明日辺りに更新させて頂きますね! (2019年5月26日 0時) (レス) id: cc62ea45a1 (このIDを非表示/違反報告)
かのこゆり(プロフ) - 更新させていただきました…!感動する素敵なお話を書かなきゃ…。と若干緊張していたのもあり、なかなか話が浮かばず、スランプ状態でした。すみません…。今回は、とりあえず気分に任せて、ふわふわあまあまなお話を書いてみました!また書けたら更新しますね! (2019年5月26日 0時) (レス) id: f03c76f078 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:作者一同 x他3人 | 作成日時:2018年6月10日 20時