【歌い手】この恋は甘く、苦い【合作】【短編集】

続き ページ3

どのくらい泣いていただろう。不意に、スマホがバイブした。電話だ。

ディスプレイに表示された名前は「そらる」。

心臓が跳ねる。先程そらるの声を聞いたときとは別の、恐怖からくる胸の高鳴り。恐る恐る画面をタップし、スマホを耳に押し当てた。

「………そらr『ごめん！』………え？」
『俺、Aに勘違いさせちゃったみたいだから』
「勘違い………？」

ぼんやりと、そらるの言葉を繰り返す。なにが勘違いなのか、わからない。少しの沈黙の後、その答えは、そらるの口から滑り出してきた。

『俺、Aと別れたいなんて思ってないよ。むしろ、その逆。………その、このままだと俺、Aを抱きしめることも、キスすることも、みつめることさえ簡単に出来ない。そんなの耐えられないから。ずっとずっとAの隣で、Aの笑顔を見ていたい。Aと触れ合いたい。遠距離なんてもう無理。我慢、出来ない』


「そらる、それって………」
声が掠れる。いきなりのことに思考が追いつかない。受話器の向こうで、そらるが優しく笑う気配がした。そのままそらるは、ゆっくりゆっくり、慈しむように言葉を紡ぐ。

『俺が言いたかったのはね………ずっと俺の隣にいて欲しいってこと。遠距離なんて、もうやめよう？俺、迎えに行くからさ。だから…………俺と一緒に、なってくれませんか？』


身体の中を、熱いものが駆け抜けていく。嬉しくて嬉しくて、とめどなく涙が流れる。

『ど、どうした？嫌、だったのか？』
焦ったようなそらるの声。私は、必死で首を振り、ゆっくりと言った。




「嫌なわけ、ないじゃん。……………そらる、これからよろしく、お願いします」
『はい。………ありがとうな、A。絶対幸せにするから』

１６６じかんのがまん、２じかんのしあわせ/まふまふ/かのこゆり→←お前の隣に。/そらる/byあかり

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