36、レッツとれーにんぐ ページ36
××
「へへっ……気持ちは有り難いけど……私はここの生徒じゃないし……」
「生徒でなくとも鍛練は出来る！」
熱い。熱すぎる。
そしてこの男、話が通じない。
「……う、うん、でも、あの……私も掃除があるから……また掃除が終わったらね！じゃあまたいつか！」
逃げるは恥だが役に立つ。
これこそが、私の座右の銘だ。そして私の生き方だ！そんな恥さらしな生き方あるかいと幻聴が聞こえるような気がする。しかし恥をさらしているのなんてもう今更なので雑巾とバケツを持ったまま、全速力で逃げ出した。
◇
黒髪を揺らして爆走する彼女の背を見つめながら熱男こと───セベク・ジグボルトはその強烈なスピードに素直に感心していた。バケツを持っているにも関わらず、あんなに走れるとは。
「───ほほぅ？入学初日でガールフレンドとはやりおるのお」
「リ、リリア様！」
いつから見ていたのか、ひとりの少年が現れた。
すぐにピンッと背筋を伸ばすセベクを見つめながらリリアと呼ばれた少年は笑う。
「お主がマレウス以外に興味を示すなど珍しい。ついに春が来たのか……今日は赤飯じゃな！」
「違います！僕がこの身を捧げる御方はただひとり！若様だけであって！」
「ならば何故あんなに構う？」
心底不思議そうに首を傾げられ、セベクも考える。
大した理由ではない。死のうとしていたのを放っておけなかったのだ。セベクが絶対的な忠誠を誓っているのは若様だけだが、しかしだからといって死に急ぐ人間を無視するほど非道ではない。それにあの場にいたのが若様だったとしてもきっと彼女を助けていただろう。
「……目を離したら死にそうな気がするから、でしょうか。だから鍛練をすべきだと」
「くふふ。そうかそうか。確かにあの異常な逃げ足の速さから見ても素質はあるじゃろうな。バケツの中身を一切溢さないであのスピード……平衡感覚や体幹も良いと見た。あれは強くなるぞ」
リリアはからかうようにセベクの背中を叩く。
それを「応援されている」と受け取ったセベクは瞳を輝かせながら「あの人間を鍛え上げてみせます！」と宣言した。
▽
(……なんか、今寒気が……)
熱男から逃げたは良いものの、凄まじい寒気に襲われた。ま、まあ……今は寒気より仕事だ。雑巾をもう一度絞り直し、廊下を駆け抜ける。丁度、曲がり角まで進んだとき、事件は起こった。
「うわっ」
「ぎょえっ」
曲がり角から現れた人物に、頭を踏んづけられたのである。
**
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柊あんず(プロフ) - 洸さん» コメント返信遅くなってしまい申し訳ありません…画力やばいですよね…表紙絵見るたびに惚れ惚れします…更新頑張りますね…！！ (2022年5月5日 17時) (
レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
洸 - 待て待て待て待て画力チートか？画力高杉な？めちゃくちゃ綺麗じゃないっすか。話も素敵です！更新待機。 (2022年4月24日 16時) (レス) id: 2f1dccb094 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 櫻陽花さん» コメントありがとうございます！ただいま訂正させていただきました〜！ありがとうございます (2021年3月29日 15時) (レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
櫻陽花(プロフ) - 序盤の鉱山内での台詞ですが…5年ではなく10年だったと思います…… (2021年3月28日 21時) (レス) id: 07bd924354 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 鮎さん» コメントありがとうございます〜！襲いくる数々の理不尽…！耐えるんだ！多分、三章くらいではメンタルムッキムッキな女の子になっていると思いますね(遠目) はい、更新頑張ります…！！ (2020年6月28日 1時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんず
| 作成日時：2020年5月30日 23時
