26、乙女のふぁいと ページ26
××
「Aちゃん！Aちゃん！」
無邪気に私の名前を連呼して全力で走ってくる人間の男子。それはとても微笑ましい光景だった。ひとつだけ文句を言うならば怪物を引き連れてこっちに来るなということだけだ。
「Aちゃん助けて！」
私は無言でローファーを脱ぐ。
そのままゆっくり野球のフォームを取り、無言で怪物の頭へ思いっきり投げ飛ばした。もちろん、ローファーは完全ヒットし怪物の動きが一瞬停止する。
「あいつ……すげぇんだゾ……」
「ひい……おっかね……」
「マブい」
「よし大分弱った……！今なら……！」
人間の男子は一歩下がると僅かに口角を上げる。
「あーもうやったろうじゃん……！チビんじゃねぇぞ真面目クン！」
「お前こそ！」
「オレ様の真の力、見せてやるんだゾ！」
三人はそれぞれ魔法を使いながら、怪物と戦う。
そして人間の男子は敵の動き、そして攻撃パターンを予測しながら彼らに的確な指示を出していた。すごい、とただ感心していると人間の男子が振り向く。
「Aちゃん、戦える！？」
「えっ……あ、で、でも、私……人は殴らない蹴らない主義っていうか……」
「あいつは人じゃないからセーフだね！」
そういう問題じゃないよ。
どう考えても正統派で可愛いヒロイン(を目指している)に頼むことじゃないんだよ。
(そっか……私はもう、)
このとき、私は正統派ヒロインではもうやっていけないと悟った。怒りと悲しみ、悔しさ、混乱、どっと感情の波が押し寄せて来て、私は地面に手をつける。深く息を吸い込んでから腰を上げた。
「───おらあ"あ"あ"あ"あ"ああ！」
膝を曲げ、身体中に力を込め、飛ぶ。
もうずっと感じることがなかったこの感覚に全身がぶるりと震えた。正統派ヒロインの道を絶たれたことへの怒りのパワーすべてを込めたこの拳を、怪物の腹辺りに撃ち込む。
「ぐーーーグエエエエエッーーー！！」
私が地面に着地したのと同時に、怪物は奇声を上げた。すかさず「今だよ！」と人間の男子がやなヤツたちに叫んだ。その声にハッとしたように彼らは魔法を使って怪物の動きを完全に封じ、打ち倒した。
「はあ、はあっ……！」
「やっ……た？」
「か、勝った……！オレ様たちが勝ったんだゾ！」
脱ぎ捨てたローファーを履き直し、額に浮かんだ汗を拭う。私が持って産まれた、この異常すぎる身体能力と怪力。もう二度と使わないって───
「Aちゃん、ハイタッチしよう！」
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柊あんず(プロフ) - 洸さん» コメント返信遅くなってしまい申し訳ありません…画力やばいですよね…表紙絵見るたびに惚れ惚れします…更新頑張りますね…！！ (2022年5月5日 17時) (
レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
洸 - 待て待て待て待て画力チートか？画力高杉な？めちゃくちゃ綺麗じゃないっすか。話も素敵です！更新待機。 (2022年4月24日 16時) (レス) id: 2f1dccb094 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 櫻陽花さん» コメントありがとうございます！ただいま訂正させていただきました〜！ありがとうございます (2021年3月29日 15時) (レス) id: 69139934db (このIDを非表示/違反報告)
櫻陽花(プロフ) - 序盤の鉱山内での台詞ですが…5年ではなく10年だったと思います…… (2021年3月28日 21時) (レス) id: 07bd924354 (このIDを非表示/違反報告)
柊あんず(プロフ) - 鮎さん» コメントありがとうございます〜！襲いくる数々の理不尽…！耐えるんだ！多分、三章くらいではメンタルムッキムッキな女の子になっていると思いますね(遠目) はい、更新頑張ります…！！ (2020年6月28日 1時) (レス) id: 30d83766f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あんず
| 作成日時：2020年5月30日 23時
