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「……?」
私は静かに目を覚ます。
だが身体が動かないことにすぐに気づいた。
そして思い出す、あの亡者を。
「…っ」
悪感が走り身体が震える。
今の状態はまるで実験でもするかのような…そんな…
亡「あぁ、起きたんだね」
顔を歪めていたらあの声がする。
そして自分の口が布で縛られていることにも気づいた。
亡「まずね、君のその綺麗な顔をぐちゃぐちゃにしよう」
__何を言ってるんだろうか。
亡「さて、これで…」
男が手に持ったのは包丁だった。
私の顔に近付いてくる。
亡「…あれ、この眼帯邪魔だなぁ」
「…っ!!」
包丁が寸前で止まり、私の眼帯をまじまじと見つめる。
私は包丁でぐちゃぐちゃにされる恐怖よりも
”実験”されるという恐怖で…
”眼帯”を外されるという恐怖で……
何も見えなかった。
亡「さぁて、外すか」
私の顔に手が伸びてくる。
_嫌だ、取らないで
「…〜〜っ!!!」
亡「おっとっと、暴れるなよ」
「〜〜〜!!!…っな」
亡「!」
「取らないで、取るな!取るな!取るな!!!!」
気づいたらその布を歯で千切っていた。
亡「大人しく、ね?」
けれど状況は変わらない。
男の手が眼帯に触れる。
嫌だっ!取るな!!取るな!
「見るなぁぁぁぁっ!!!!!」
亡「っ!!!」
悲痛の叫びにも、雄叫びにも、聞こえるような声がその部屋で反響する。
空気が震え、私を中心に地面が割れた。
その割れ目はクモの巣のように広がり建物全体を揺らす。
「…あ……」
その衝撃で、私を固定していたものは砕け散った。
そしてふらりと机から降りる。
足元に生暖かい何かがあるのがわかった。
「……あ…あぁ…」
それは先程の亡者の血。
床に広がり真っ赤な絨毯を作っていた。
そこに映る眼帯の無い自分の顔。
「…ちが、う…これ…は」
私は血で汚れようが構わなかった。
ただ、絶望していた。
だって使ってしまったから。
バケモノだと認める力を。
自分をバケモノだと肯定してしまう力を。
「…あ……あ、あぁ…」
ようやく、また、はっきりと思い出した。
生前にあった過去を。
自分は獄卒でも、人間でもない…
「うわぁぁぁぁぁあっ!!!!!」
バケモノだったのだと。
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ゆっきい - 田噛がイケメソすぎて涙出てきたお、、、、、 (2016年9月17日 9時) (レス) id: 0db5e774af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:燐音 | 作成日時:2015年7月4日 16時