検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:122,630 hit

23 ページ27

__





_佐疫 side_




「何も、無いな」



永遠に続くかのような真っ暗な通路。

かれこれ数十分は歩き続けているだろう。

一向に出口は見えてこない。



「……本当に何も無い…とか?」



まさかと口に出して少し笑う。

だってそれならわざわざこんな扉を作って、

俺たちを誘導するはず無いのだから。



「………誰か…いる…?」



さっきまで両側の壁を手で触れるくらいの通路を通っていた。

けれど今はその壁も無くて広い空間に出たのだと分かる。

薄暗いその空間の中央に、何かいた。



?「…その声……佐疫か…?」



聞こえてきたのは馴染みのある声。

しかしその声に覇気はなかった。



「田噛?」

田「あぁ、俺だ…」



万が一に備えて銃を構えながら近付いた。

近づくにつれハッキリと見えるその姿。

間違いなく田噛だ。

けれど……


「血が…」



異様な光景だった。

田噛は椅子に鎖で縛られ、

身体の至るところを杭で打ち付けられている。

床には大量の血が広がっていた。



「待ってて、今抜くから……」

田「あぁ……だるい…」



いつも通りの彼の口調に少し安堵した。

しかしこの大量出血だ。

回復まで時間が掛かるはず…



田「……さんきゅ」

「大丈夫?」



身体が自由になり、立ち上がった彼を支える。

フラフラと落ち着かない歩き。



「助角さんに頼まれて来たんだけど何があったの?」

田「ガキだ…これくらいのガキにやられた」



田噛は自分の腰くらいに手をやって身長を教えてくれた。

その大きさからするに小学生の低学年くらいだろう。



「珍しいね、田噛が子供にやられるなんて」

田「あれはガキじゃねぇよ…」

「どういうこと?」

田「狂ってる」



田噛は一言、ハッキリそう言った。

俺は一瞬驚いたが頭のいい彼の事だ。

それくらいの力があると確信したんだろう。



「田噛、すぐに歩ける?」

田「あー?だるい」

「えー…参ったなぁ、神影ちゃんと早く合流しなきゃ…」

田「アイツも来てるのか?」



俺の言葉を遮って、田噛は珍しく声を上げた。

その尋常じゃない焦り具合に嫌な汗が伝う。



「どう、したの?」

田「あのガキの狙いは同じ境遇の奴…つまり神影だ」



田噛がそう言った瞬間、悲鳴に似た声が響いた。




『 来 な い で 』




その声は間違いなく神影ちゃんのもので…。

その声を聞くや否や、田噛は駆け出した。

いつの間にか持っていたツルハシを握りしめて__。

24→←22



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (51 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
設定タグ:獄都事変 , 田噛 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆっきい - 田噛がイケメソすぎて涙出てきたお、、、、、 (2016年9月17日 9時) (レス) id: 0db5e774af (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:燐音 | 作成日時:2015年7月4日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。