1-1(日向なつ) ページ1
ふわふわの柔らかいベッド。
お気に入りの洋服たち。
――アリスが目を開けると、そこは見慣れた自室だった。
「…ハッター？」
「わーーーーー！？」
「ハッター！？ チェシャ！？」
飛び上がってリビングへ向かう。付けっぱなしのテレビ画面を前に、チェシャとハッターの二人が剣を構え…ようとして、手に持っている鞄を構えた間の抜けたポーズで立っていた。
「…何、してるの？」
「アリスさん！ これ、枠の中で人が喋ってます！」
「わたしの…まほう…？」
「うーん、マーチとスリーピーのほうが冷静ね」
マーチとスリーピーがぱたぱたと駆け寄ってくる。ロザリアは不思議そうな顔でテレビの枠をつんつんとつついている。
「それはね、テレビって言って…うーん、遠くでその人たちがお芝居したり話してるのを映しているの。あとで使い方を教えるね。…そう言うわけで、チェシャとハッターは怪しいものじゃないから落ち着いて？」
アリスの言葉にチェシャとハッターはようやく体の力を抜いた。かと思えば、今度は窓の外から聞こえるトラックの走る音に身を固くする。
「…ホワイトを探す前に、まずはみんながこの世界に慣れる時間が必要みたいね」
幸い、カレンダーと時計を見ると今日は平日の19時前。ちょうどアリスが
「にしても、この世界のことか…どうしようかな」
「あ！ そういえば…これ」
ふとマーチが何かを取り出した。
ハッターが色々と詰め込んで重くなった鞄の隅から出てきたそれは、綺麗にアイシングの施され『Eat me』と書かれたクッキーだ。
「これ、アブソレム？さんから貰ったんです。アリスさん以外は、必要になるだろうって言ってました」
「本当？ 何だろう」
書かれている文字を直訳するなら、私を食べて。それならば、食べてもらった方がいいだろう。
｢とりあえず、アブソレムからだし、何も危険はないと思う。とりあえず皆で食べてみたら？人数分あるし｣
アリスの言葉に、ハッター達は1口大の星型のクッキーを口に放り込んだ。ちなみに、マーチやスリーピーは、一口では難しく、何口かに分けて食べており、なんだか微笑ましかった。
クッキーを食べ終えると、ハッター達は頭を抱えた。何事かと思ったが、次の瞬間には大丈夫だというので、アリスは首を捻るばかりだった。
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作者名：ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年7月22日 15時
