比翼の鳥 (ページ10)

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切れ味の良い鰭　°バニラ_gt.cho. ページ10

貴方side

一日10時間、人間はブルーライトを浴びると死にかけるらしい。

噂ではなく、紛れもない事実。時すでに時計の針は10時を指している。

心地が良いとは言えない椅子に座り、カタカタとキーボードを打ち込む仕事は好きで始めたが、まさかここまでとは‥

マネージメントをしているバンドは絶賛制作期間中で、私の方にも仕事が流れ込むことが多々ある。

現在取り組んでいる仕事も、好みではない上司から頼まれたもので頼み方ってもんがあるだろ！あのツルツル！！

『バニラズ、好きだけどさ‥大好きだけどさ‥定時過ぎの仕事にしては多すぎだろ！こんにゃろおおおおお！！明日でも良いのに！！！』

『なにが期限は今日中だよ！？あの中年スーツ野郎、本気でぶっ飛ばしたい‥』

ひとりぼっちのオフィスで呟く愚痴は小声にも関わらず、やっぱり響いてしまうもので

柳沢「あれ、Aちゃん？とっくに退社時間過ぎてるんじゃ‥」

『え、はい‥過ぎてるかな‥五時間ほど‥』

まずい、愚痴も含めて聞かれたかな？

同級生という共通点がきっかけで仲良くなったギターの進太郎くん。

来世絶対に無いと思うが、この方とお付き合いさせて頂いております。その上、同棲もさせていただいております。毎日が宝物すぎて、幸福感に満ち溢れております。

仕事以外でもご飯に行ったりしているため、世間に勘づかれないように‥どうにか誤魔化さなければと奮闘して約2年ほど。

できるだけ聞こえないように語尾を小さくしたのに、拾われてしまった。

柳沢「え！？五時間！？」

『バニラズのスケジュール追加の資料が来たから、まとめてたらこんな時間に‥決してしんどいとかではないから！』

柳沢「うん、それはすっごく伝わってきてるんだけどね？それにしても、五時間も過ぎちゃってるよ！？」

『‥今日中に提出するように言われちゃって、ね。進太郎くん、先帰ってて！！これ、あとちょっととかで終わらないかも‥』

柳沢「いやいや、待つに決まってるじゃん！！こんな暗いのに、彼女一人で帰らせるわけにはいかないよ？こういう時に甘えておきなさい！」

左隣の椅子に座り、私のパソコンを覗き込む進太郎くん。うわ、横顔綺麗すぎ‥

目の保養‥ありがとう神様‥

柳沢「‥こら、本音が溢れてる」

『失敬、失敬。全力で取り組みます』