比翼の鳥 (ページ6)

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おあいこ　　°髭男_gt.　　ページ6

貴方side

真昼時、ポロンポロンと手元で鳴るFコードとは裏腹に、隣の部屋から聞こえてくるのは某スパイアニメのギターリフのサウンド。普段は猫を見て、シャッターを押して端末に保存するなり頬が緩んでいる彼はギターを構えた瞬間、まるで中身の人間がまるっきり変わったように逆変するのだ。俗に言う、ギャップだ。

『にしても、何であんなに可愛いんだろうか‥』

ビー玉のように艶のある大きな瞳、本当にブリーチをしたのか疑う程の髪の毛、前世絶対美人じゃないと兼ね備えないようなものを持っているため、女子の私からすれば、憧れる以前に大輔に嫉妬するくらいなのだ。

『私なんかが彼女って‥なんだか釣り合わない気がするなあ』

　

全体が十として、私と大輔の比は一対九ぐらいの差が生まれているはず。
国民的バンドと世間に称される中、私のバンドはメジャーデビューをしていて色々なアリーナやライブハウス、ホールなどで公演をしているが、彼の位置から一歩、いや数十歩離れている気がしている。
そんな事を考えていたら、自然と大粒の涙が頬を伝い、床にシミを付けていく。ギターを抱くようにして、瞼を濡らした。隣部屋からギターの音が聞こえなくなった、と思えば前方からドアノブを捻る音がして

「ねぇ、A〜って‥どうしたの？」

『っ、大輔…』

「ちょっと待ってね、ギター重いでしょ？立て掛けとくね。っよし、」

がたりとスタンドに置いた音がしたと思えば、後頭部と背中に手を添えられて、正面から優しく抱きしめられた。ぽんぽん、と規則正しくリズムを刻む右手は溜まっていた言葉を吐き出せる促されているようだった。

「ゆっくりで大丈夫だから、話せそうかな？」

優しくて暖かい言葉が涙腺を刺激し、本当に私が彼女で良かったのか、これからのバンド活動においての不安や悩みを打ち明け、胸の内に隠していた真っ黒な感情を全て言葉に綴った。