比翼の鳥 (ページ22)

今日:25 hit、昨日:5 hit、合計:6,377 hit

コンビニエンスラブ　vanillas-gt.vo ページ22

貴方side

カチ‥カチ‥と人気のないコンビニの中で時計の針が響く。あとちょっとで‥よし！

『お疲れ様でーす‥』

ぼそっと小声で言葉を残してから、バックヤードまで移ると同じ時期に入ってきたアルバイター仲間の牧くんも制服を畳んでいた。大欠伸をしながら帰宅準備をしていたため、思わずふっと笑ってしまった。

「あれ、Aちゃんもシフト上がり？お疲れ様」

『牧くんもお疲れ様！19時上がりだからさっき速攻抜けてきた』

「はは！Aちゃんらしいや、ギリギリまで時計見てたんでしょ」

なんでそんなこともわかるんだ‥と思いつつ、今日はなんだかいつもよりも気分が沈んでしまっている。なぜなら、店長に理不尽なことで怒鳴られたのだ。しかもお客様の前で。

『何もあんなことしなくても良かったよね‥』

「ん？あれは絶対にAちゃん悪くないでしょ！！！！」

『ありがとう牧くん、一人同じ意見を持ってる人がいて心強いよ』

トートバッグに荷物を詰め、そろそろ長居するのもどうかと思い一歩踏み出そうとしたとき

「あのさ、今度愚痴とか言い合わない？お互いにシフト合わせて、終わってからおいしいご飯でも行こうよ！俺もあの店長に不満あるんだよね」

へらり、と笑いながら突然舞い降りてきたお誘いは私の今の気分にはうってつけのもので

『もちろん！私ね牧くんにたくさん話したいことあるんだ』

「ほんと！楽しみになってきたなあ‥日時とかは連絡取り合えた方が良いよね？交換しよう、連絡先」

お互いにスマホをと出し合い、ぴこんと可愛らしいスタンプが送られてきた。

「もうこんな時間！？遅くなっちゃったから、俺家まで送るよ？」

『大丈夫だよ！迷子になったりしないよ？』

「‥そういうことじゃないけど、心配だから甘えといてよ。ほら、帰ろっか」

世間話をしつつ、バイト先から程ない場所にある自宅まではあっという間に着いてしまう。もうちょっとだけ牧くんと話したかったのにな‥

「ここ？」

『うん、そう！ありがとう、夜遅いのにわざわざ送ってくれて』

「いやいや、Aちゃんに何かあったら俺めっちゃ心配だからこれからシフト被ったら送るね。気をつけてね」

ふわりと頭に温かみが移り、撫でられたと思うのに時間がかかってしまった。

顔を見上げると、したやったり‥と無邪気な笑みを浮かべていた。

「じゃ、また今度会おうね。楽しみにしてる！」