比翼の鳥 (ページ21)

今日:6 hit、昨日:29 hit、合計:6,387 hit

◯ ページ21

貴方side

『‥え？』

投げかけられた言葉は驚く以外の感情が溢れてこなかった。

彼は今何を口にした？

はっきりと聞こえたけれど、私には掛け離れた言葉が聞こえたような気がする。

『八木くん、相手間違ってない？その、なんと言うか‥』

八木「間違ってなんかないよ。俺の心からの願望、かな‥もっとAちゃんは自惚れてよ！他人事じゃないんだからね？」

丸々とした瞳から放つ意思は限りなく本物に近く、私の心を焦がしていた。

嬉しくないわけではないが、私が本当に彼のことが好きなのかも分からない。

想いをストレートに伝えられることに慣れていない私はどうすれば良いか迷っていた刹那、両手を取られ

八木「先ずは後夜祭のライブに来てよ！Aちゃんが見に来てくれたら、いつもより頑張れちゃうな」

思っていたよりも骨張っていて性別の差を感じる手の違いに衝撃を受けつつ、こんなにキラキラと輝く目で見られると断るのも気が引けてしまう。

『見に行こうかな、折角だし‥』

八木「っ、マジ！？来てくれんの！？好きな子が俺のライブに来てくれるの憧れだったんだよね！！」

誰だよ、八木くんは小型犬って言ったの。小型と名乗ったセントバーナードみたいだと不覚にも感じてしまった。

『私後ろの方で楽しむね。KEYTALKって人気だから色んな子が前の方を絶対に狙ってるし、知らない奴が来てもあんまりでしょ？』

八木「確かに前の方はわいわいしてるけど‥KEYTALKを知らないからこそ来て欲しいんだよ！Aちゃんなら尚更だし‥って、店番大丈夫！？」

『まあ、なんとかなるでしょ！そんなに忙しくなさそうだからゆっくり帰ろっか』

声を掛けたが、返事がない。何か間違ったかな、と不思議に思っていると

八木「ねぇねぇ、Aちゃん。俺のこと名前呼びか八木ちゃんって呼んでくれない？くん呼びだと距離感じちゃうから‥」

確かに私は八木くんと呼んでいるけれど、相手は名前＋ちゃん付け。

優樹？急に名前呼びは流石にハードルが高すぎるな‥なら、

『優樹‥くん？』

八木「へ！？今呼んでくれた！？急にこれはやばい‥」

ぐりんと振り返り、頬に手を当てきゃーと呟いていた。

八木「漸く俺のことちゃんと意識して見てくれるね、Aちゃん！」